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卒業生から生命科学へ進む女子高生へのメッセージ

卒業生の方へ(メッセージの募集)

森藤 倫子
筑波大学 第二学群生物学類 4年次 基礎生物学コース所属

森藤 倫子 筑波大学 第二学群生物学類 4年次 基礎生物学コース所属

ついこの間、私の所属する研究室で、助教授によるマダガスカル旅行報告会が行われた。といっても、その助教授と京大の先生との2人旅を写真で紹介する程度の内容だった。たくさんの、マダガスカルの人々の生活と町並み、売られている牛、そして現地の野生動物、ワオキツネザルやインドリなどの原猿類にサギの仲間の写真。そしてそれらの写真の間に出てきたのが、ガイドの背中にへばりついたイグアナやヤモリ、昆虫たちであった。緑色の巨大なイグアナの写真が大きく映し出されたとき、研究室の人々の間にざわめきが走った。ある女性メンバーは、小さく悲鳴を上げた。「可愛い!」

人生において初めて蛇を見つけたのは、小学校の帰り道だった。川沿いの草むらに、縞々の蛇の背中がのぞいていたのを今でも覚えている。子供の頃の私はとても利口だった。蛇をもっと良く見たいという思いもあったが、蛇は咬む生物で、一部の蛇には毒があり、咬まれると危険であることをちゃんと知っていた。小学生の私は蛇を横目で見ながら足早にその場を立ち去った。次に蛇に出会ったのは中学生になった頃だったと記憶している。中学生にもなると、私は小利口になっていた。蛇はかむが、かまれて危険な蛇はごく一部であり、めったに出てこないことを知っていた。そうなると私の欲求を抑える理由は何も無い。今度は喜んで蛇を追った。そして当然咬まれた。今あの時のことを思い出すと、まるでそれ以降の私の、動物への対応を全て物語っているかのように見えてくる。今の私は小利口どころか、大馬鹿である。爬虫類も両生類も節足動物も、もちろん鳥や哺乳類、様々な軟体動物たち、異国の奇妙な植物たちには触れなくては気がすまない。残念ながら魚類には他の動物ほどの強い衝動を得られることは無いが、それら生物たちを実際に見たい、触れたいという感情がある。目の前の生物と私の知識とを比較して、触ったら有害という結果さえ出なければ触りにいく。たとえ有害であっても、何らかの方法でその生物をいじりたい。どうして自分の中にこのような感情があるのか、私には全くわからない。これからの人生、より様々な生物を見て過ごして生きたい。この感情におもむくまま、気が付いたら私は大学にいて、そしてさらに動物生態学の研究室に入っていた。

先ず大学に入った時点から、清心にいた時代と比べて当然、周囲には生き物に魅了されている人々が多かった。その中で私は、鳥を追いかけては他の大学生にひかれ、昆虫を平気で触っては他の女性に信じられないと言われ、さらには通りすがりの犬に夢中になっては、何故か同じ学科の友達にすら苦笑いをされてすごしてきた。私に影響されて,2人くらい生物好きに道を踏み外していったほどだ。そんな、比較的生き物が好きであるという事で疎外感を得ていた3年間から、研究室で聞いたイグアナへの感嘆の声は、ついに行くとこまで行ったという感動を私にもたらしてくれたのである。生物への不思議な衝動を持つ人たちが、こんなにも集った研究室にたどり着いたのだ。小学校の頃の自分から随分遠くまで来たものだと、感慨深く感じたものだ。

現在、私は先にも書いたとおり、生態学の研究室にいる。実験材料はマメゾウムシという、アズキや大豆などの豆につく害虫である。害虫とはいえ、駆除するために研究するのではない。ショウジョウバエのように、実験室で飼育され、モデル生物として系統が作られている。私がこれから卒業研究でやろうとしているのは、有性生殖を行う生物の、種分化の仕組みに関することである。こう書いていくと何だかとても格好いいのだが、実際はまだまだだ。実験を組み立てるために知らなくてはならないことはまだまだあるし、これから私の大嫌いな勉強もたくさんしていかなくてはならない。ちゃんとついて行けるかとても不安なのであったりする。なぜ自分がこの分野を選んでしまったのか、疑問を持ったりもする。それでも自分の中に、子供の頃から変わっていない感情はちゃんと存在していた。生き物を前にして感じる事ができるこの感情を、今はそれだけを信じて、自信の無さのあまり、簡単な方向へ逃げ出したくなるのを踏みとどまっているのである。

これから、こういった分野に進学を考えている方には、ぜひそのまま迷うことなく突き進むことをお勧めする。友人がなかなかの名言を教えてくれた。こういう分野は、やろうと決めたらそのまま立ち止まらずに突き進むべきである。疑問を感じて立ち止まってしまうと、もう進めなくなる、と。私は一度立ち止まりかけて、また走り出そうとしている状態である。確かに、止まってしまったら走り出すのには莫大なエネルギーが必要だ。ぜひ皆さんには立ち止まらずに進んでほしい。そして万が一、やりたいことと違った時には、いくらでもやり直して走ってほしい。当然、その過程にある大学受験は、あくまでも過程でしかないことも知って欲しい。私が受験生の頃には、まるで大学受験を人生の目的に考えているような人たちはたくさんいたし、予備校などでは大学に落ちると人生の失格者であるような雰囲気であった。けれど本当は、大学とはそんなところではない。大学の同級生にはたくさんの浪人生がいる。研究室にはすでに子持ちの院生がいる。そんなことはたいして気にされない。問題とされるのは、むしろどれくらいやりたいことに対して努力したかである。もし、生物や物理や化学,地学,農学に看護士,医学など、自分のやりたいことがあるのであれば、ぜひ様々な過程に迷う事無く、突き進んでもらいたいのである。

岡本 祐佳
岡山大学医学部 保健学科 看護学専攻2年

岡本 祐佳 岡山大学医学部 保健学科 看護学専攻2年

私がこの進路を選んだ動機は、中学生の時から老人ホームなどを訪問しているうちに看護師という仕事に興味を持ち始めたことからはじまります。看護師は患者さんの身の回りのお世話をするだけではなく、患者さんの目には見えない心をも理解していかなければなりません。そんな人との係わり合いが絶えることのない看護師という職業はなんて素晴らしいのだろうと思い、この進路に進むことを決めました。

今ではその看護学専攻を選択してから1年が経ちました。今でも看護師という職業への情熱を絶やすことなく大学生活をおくっています。つい先日ですが、国立療養所の長島愛生園に実習に行ってきました。まだ技術的なことはほとんど習っていないので、みなさんの想像する看護実習というようなものではありませんでしたが、人として大切なことをたくさん学んできました。机上の勉強だけでは体験することのできないことがたくさんあるのだと気づかされました。また部活動では、わたしは軟式テニスをしています。高校の部活は英語部だったので、大学に入って何か運動がしたいと思いテニスを始めました。サークルと違って部活は多少厳しい面もありますが、毎日充実した日々を送っています。

さて、わたしは大学に入って思ったことがあります。それは目的を持つことの難しさです。わたしはただ漠然と看護師という仕事に夢を見て大学に入ったわけですが、同じクラスにいる具体的目標を持っている人たちと比べると意識が低いと自分で感じます。すごく悲しいことです。ですから、生命科学コースを選ぶみなさんには、是非具体的な目標を持って一心不乱に頑張ってほしいなと思います。なぜこのコースを選んだのか、なぜこの学部を選ぶのか、自分の中でしっかりと考えてほしいなとわたしは思います。目的さえしっかりしていれば、どんなに辛いことでも乗り越えていけると思うからです。しっかり頑張ってください。

加藤 量子
大阪府寝屋川市 調剤薬局経営
2003年 大阪薬科大学薬学部薬学科卒業

加藤 量子 大阪府寝屋川市 調剤薬局経営

私にとって清心で学んだ6年間は有意義で楽しい日々でした。親身な先生方や温かい友人たちに恵まれて、いい思い出が沢山つまっています。理系に進もうと考え出したのは中学生のころだったと思います。医療に憧れを抱いていたこと、そして「資格を生かして働きたい」と希望していたこともあって、薬学部を進路に選びました。大学時代に、地元病院での実習で医療現場の空気を知り、所属した研究室では薬品開発にも携わり、「臨床」と「研究」の両方に触れることができましたが、とても貴重な経験だったと思います。私は現在、主人とともに調剤薬局を経営しております。薬局薬剤師の主な仕事のひとつに処方せん調剤があります。調剤は正確さとスピードが要求されます。薬は患者さんが飲むもの、間違いがあれば、それはすぐに患者さんの健康を損なうこともあるので、ミスがあってはなりません。 私の薬局では、散剤を服用されている患者さんが多く5・6種類混合する事もあるので、調剤自体はもちろん、できあがりの確認にも常に気を配っています。処方せんに医師が記した用法・用量自体に間違いないか、飲み合わせは問題ないか等のチェックも行います。これらを正確におこなうには、多くの知識が必要とされます。患者さんから薬や病気について相談を受けることもしばしばですので、国家試験にパスするだけでなく実際に働きだしてからこそ、新しい知識を身につける努力を常に怠ってはいけないなと、痛感しています。患者さんの中には、病気のせいで心に不安を抱えてしまっている方もおられます。薬や病気に対するアドバイスをさせて頂くだけでなく、患者さんの気持ちも受け止めて、安心してもらえるよう心がけています。そんな中で患者さんから納得とともに笑顔がこぼれた時が、私が薬剤師としてのやりがいを感じる瞬間でもあります。私の体験が在校生の皆さんのご参考になれば幸いです。今、高校時代という可能性にあふれたこのとき、日々充実して過ごされることを願っております。

栢野 愛
京都薬科大学 薬学部薬学科 4年

私が理系に進路を決めたのは高校に入る前くらいだったと思います。その理由は単純に理系科目が好きだったからでした。大学の進路は受験が終わってからも悩みましたが,両親や先生,友達に相談したりもして,京都薬科大学への進学を決めました。

私の大学では3回生11月から研究室に配属となって,翌年の卒業論文の発表まで,その研究室で実験を続けます。私の研究室では6つのチームに分かれて実験をしているのですが,私のチームではヒトの培養癌細胞を使って耐性について調べています。実験は細かい作業が多く,しっかりやったつもりでも結果が出なかったり,ミスをして,育てた細胞がバクテリアに汚染されて使えなくなったり,なかなか思うように進んでいないのが現状です。院生さんの指導の下,試行錯誤を繰り返しています。実際に研究室に入って自分でやってみることによって,今までに分かっていないことを調べることの難しさや面白さを知ることができました。そして,今年の3月から4週間の病院実習に行く予定です。(薬学部が6年制になるとこの実習期間も長くなると思うのですが・・・)医薬分業がいわれている現場の医療はどのようなものなのか,薬剤師が医療チームの一員としてどのような働きをしているかなど,自分で見ることができるのでとても楽しみにしています。

生命科学分野に進学を考えている皆さんは,自分が不思議に思った気持ち,やってみたいと思う気持ちを大切にしてほしいと思います。大学の進路を決めるとき,私はすごく悩みましたが,今の道に進んでよかったと思っています。大学に入ってからも,苦しいことがたくさんあって,これから先にも乗り越えなければならないことがたくさんあり不安はありますが,そんな時,私は今の進路に決めたころの自分の気持ちを思い出します。目標をもって,自分にできること,自分のやるべきことを見つけて楽しい高校生活を送って下さい。

久保田 恵理
神戸薬科大学 薬学部 2年

私がなぜ理系を選んだかと言うと、文系は過去を探る学問、理系は未来を探る学問というイメージが私の中にあったからです。私は、どうせなら未知のことを知り、未来を切り開いていく理系に行こうと高2の時決心しました。しかし、高校の始め頃は、化学が一番の苦手科目で、まさか自分が理系に、そして薬学部に進学できるとは思ってもいませんでした。けれど、こんな私が今、後輩たちにはっきりと言えることは、得意教科で進路を決めるのではなく、いかに自分がその分野に興味があるかで進路を決めるべきだ、ということです。私が薬学部に進みたいと思った動機は、生まれつきのアトピー性皮膚炎で中学、高校、そして大学生になった今も何度となく薬に助けられていることにあります。薬がなければ、きっと今の私はいないと思います。だから私は、今度は自分が現代病とも言われるアトピー患者を一人でも救いたいと考え、薬科大学に進みました。

しかし、生徒さんの中には、何に興味があるのか分からない、という人が必ず一人はいると思います。そんな人は、多くの人と出会って話をしてみて下さい。興味は自分から見つけるものだけれど、私は興味とは、人との出会いで見つかるものだと思っています。私を変えた一番の大きな出会いは、サイエンスキャンプでした。サイエンスキャンプとは、文部科学省主催のキャンプで、科学について興味がある生徒が全国から集まり、最先端の研究所で実験などの体験をするプロジェクトのことです。私はそこで出会った仲間や研究者から、たくさんの刺激をもらいました。なかでも印象的だったのは、中絶胎児の細胞を使って研究をしている元脳外科医の研究者でした。彼は、捨てられる運命の中絶胎児の細胞を使って、新たな臓器を造り出そうとしていました。彼から学んだことは、「あきらめないこと。常に前進していれば、失敗が成功の鍵になることだってある。」ということでした。このキャンプでの経験は、キャンプ後の私の大きな原動力となり、私に本気で薬学の道に挑戦してみようという気にさせてくれました。

今、無事薬学生としての1年を終えて、4月から2回生という新たな時に私はいます。清心を卒業してからこの1年間、私は無機化学、生化学、生薬学などの薬学的な基礎知識と共に、サリドマイドや、イレッサ、ソリブジンなどの薬害についても学びました。薬とは、素晴らしい面も発揮する反面、一つ間違えれば取り返しのつかないことになるという恐ろしさを大学に入って知りました。薬剤師とは、本当に正確な知識と責任感を要する職種なのだと講義を通して痛感しました。薬学部は来年から6年制導入と、現在大きな変動期にあります。しかし、薬剤師に求められている根本的なものは、今も昔も変わらないと私は思います。薬剤師の使命は、3本の柱で成り立っているそうです。「新たな薬の創造」、「薬の適正使用」、「薬のいらない健康な体作り」、この三つが薬剤師の使命だそうです。私はこの3つの使命を常に心に留め、国家試験までのあと3年間、本気で薬学の専門知識を自分のものにしていこうと思います。そして、自分の可能性を信じて、アトピー性皮膚炎の新薬開発という夢に向かって突き進んでいきたいと思います。

最後に、生命科学分野に進学を考えている生徒さんへのメッセージですが、生命科学分野はこれからますます発展し、現代に大きな影響を与えると思われます。また、環境問題などが叫ばれている今の時代、生命科学分野の必要性はますます高まっていくことでしょう。生命科学分野はこれからの時代を反映した魅力的な分野だと私は思います。私は薬学部に入り、やはりこの道に進んで良かったと確信しています。なぜなら、もし災害などが起こった時、何もない状態でも自らの知識だけで人を助けることができるからです。実際、阪神淡路大震災の時には多くの薬剤師が活躍したそうです。だから、もしこの分野に進学を考えているなら、恐れずに挑戦してみてください。そして、つらいことがあっても、失敗しても、自分の選んだ道を信じ、今すべきことをあきらめずにし続けて下さい。日々、着実に一歩一歩進んでいけば、また新たな発見があると思います。私も、これから新しいことにどんどん挑戦していき、清心の名に恥じないようがんばっていきたいと思っています。みなさんも、未来だけを見据えて、ゆっくりでもいいから自分の目標に向かって前進していってください。応援しています。

宮迫 陽子
岡山大学大学院 自然科学研究科 分子・生物科学専攻

宮迫 陽子 岡山大学大学院 自然科学研究科 分子・生物科学専攻

私は大学進学に当たり、"理学部"という学部を選んだ。その先のこと(やりたいことがある、将来就きたい職業がある、など)を考えての進学ではない。言ってしまえば、特にやりたいことが無く、大学にいる間に考えればいいだろう、それくらいのものだった。数学が好きだったし、理科も面白いとは思っていた。だから、可能性として広がりのある理学部くらいが妥当だろう、これがこの学部を選んだ理由である。比較的私立にいれば大学進学は当然のことのように考えられ、私も例に漏れることなく進学という道を選んだ。今でもそれは間違った選択ではなかったと思っている。要は大学に入ってからどのような学生生活を送るか、これが重要なのである。高校生の時に明確な将来像を描いている人はほんの一握りにしかすぎないであろう。あせる必要は無い。しかし、入学することに重きをおき、大学名だけにとらわれた大学選びをするのは危険である。どんなに有名な、あこがれの大学に入ったとしても、その大学名があるのはわずか4年間だけである。卒業後はどこかの企業におそらく就職することになるだろう。同じスタートラインに立たされ、就職という大きな壁に立ち向かう時、大学名はもはや助けにはならない。何を学び、どのように充実した学生生活を送ってきたのか、これが求められるのだ。

現在大学時代とは異なる大学で過ごしている。大学院で編入したことにより、2つの大学と研究室を経験することができた。ここから言える事は、高校生の時、大学選びに大いに利用した偏差値は実はそんなに重要ではなかった、ということである。どの大学に入ったとしてもそれなりの充実した生活は送ることができる。ただいたずらに日々が過ぎていく、といった時間の過ごし方だけは避けたほうがよい。あとで振り返った時、濃い時間を過ごせていた、そう思えるような生活を送ることができればよいと思う。 先日、幸いにもビール業界で内々定をいただくことができた。お酒を造ったり、商品パッケージの開発・改良が主な仕事内容になる。商品に近いところで仕事を行なうことができるので、とても楽しみにしている。

大学の方では、生物関係に進み、現在は"時間生物学"という分野で研究を行なっている。身近な言葉を使えば体内時計に関する研究を行なっており、まだ始まったばかりの分野なので十分に活躍の場があると言える。現在は手掛けている研究テーマにおいてある程度の結果を得ることができたので、論文という目に見える形にしようとしている。理系の学部の良い所の1つに、論文や学会などといった場で実験の成果を公表することができる、ということが挙げられる。これは言い表せない達成感を伴うものであり、人から認められるというのはやはりうれしいものである。人に認められたいという願望が強く、自分でやると決めたことに関しては集中して行なうことのできる私にとって、現在の学部や研究室は最適であった。毎日が充実していると胸を張って言える生活を送っていると思っている。

皆さんは、これから先、様々な方向に向かって進んでいくことになるだろうが、正解とされる道はおそらく存在しない。大切なのはどの道を選ぶのか、ということではなく、自分の選んだ道でどれだけ納得のできる生活を送ることができるのか、ということであろう。間違えてしまったなら、そこから何かを学び取れば良い。後悔することの無いような日々を送って欲しい。

玉井 里実
(財)倉敷中央病院 薬剤部勤務
平成11年3月 京都薬科大学 薬学部 薬学科卒業

玉井 里実 (財)倉敷中央病院 薬剤部勤務

私は幼い頃より医療の道に進みたいと思っていました。看護師として病院に勤務する母の姿を見て私も人の役に立つ仕事に就きたいと思い、その中でも病気の治療に欠かせない薬に興味がわいたので、薬剤師という職業を選びました。

現在の職場では、患者様の薬の調剤、特に注射剤や抗癌剤の調製を行う注射薬調剤業務と、患者様に薬の説明を行う服薬指導業務を行っています。患者様に安心して治療を受けて頂けるように、正確な調剤を行うこと、わかりやすく説明することを心がけています。常に新しい病気が見つかり、新しい薬が開発されていくので、正しい知識を得るために勉強することも欠かせません。どうすれば患者様に一番良い形で薬や情報を提供できるのかを考えながら、日々業務を行っています。

薬剤師だけでなく、医療関係の仕事には必ず「人の命に関わる」という責任が伴います。時に重すぎると感じるときもありますが、全てのことは自分を成長させる糧であると私は思っています。

自分の進路を決めるということは、自分と向き合うよい機会です。自分のやりたいことをしっかり見つめて進んでいけば、自分の望む未来が開かれると思います。頑張ってください。

惠谷 浩子
東京農業大学 地域環境科学部 造園科学科

惠谷 浩子 東京農業大学 地域環境科学部 造園科学科

『百聞は一見にしかず』私が進路について考え始めた中学三年生のとき、つまり先生方から「そろそろ進路を考える時期ですよ!」といったようなことを言われ始めた頃です。当時ガーデニングにはまっていた私がここしかない!と見つけたのが東京農業大学造園科学科でした。それから造園について調べ、勉強し、造園がいわゆるガーデニングや庭木だけでなく、景観計画や地域計画、自然保護、観光地計画までランドスケープに関わる幅広い分野であることがわかりました。私のガーデニング熱はすぐに冷めてしまい、他の分野への進学を考えましたが、やはり造園に対する思いは変わりませんでした。また進学候補に挙げていた分野を、偶然にも高校時代に体験できたことも進路を決める大きな要因になりました。2年生の夏には、つくば市の中央農業総合研究センターで開催される高校生向けのサマーキャンプに参加でき、バイオテクノロジーの様々な講義や実験を行うことができました。そしてまた3年生の夏には東大の千葉演習林で行われるサマーキャンプに参加できました。頭の中で考えて思うことと、実際に体験してみて感じることは違うものです。造園を知れば知るほどやりたいことが膨らんできましたが、やがて造園の中でも特に進みたい方向も決まってきました。夏休み中のオープンキャンパス時に研究室訪問をして、師事したいと思っていた先生から直接お話を聞くことができたこともよかったです。

『フィールド命』
私の所属している研究室は「自然環境保全学研究室/観光レクリエーション研究室」といい、国立公園や農村を対象とした景観計画などを主に研究しています。入学後研究室に入室し、それからは常にスケジュールに調査や活動を入れています。忙しいですが充実した日々です。中でも2年生の春休みに参加したエベレスト環境調査隊は特に印象深いです。農大山岳部のエベレスト登山隊と一緒にベースキャンプまで行動し、その間にいろいろな調査活動を行いました。登山隊が山岳部OBを中心としているのに対し、環境調査隊は学生が中心です。私が担当したことは、集落の配置や排水の流れなどを地図にする作業です。この地図をもとに断面図を作ったりしました。エベレストベースキャンプ(5350m)までは、約50kmの道のりを歩いていきます。その間、ヒマラヤのダイナミックな景観を楽しみつつも、高山病にならないよう注意を払わなければなりません。富士山にさえ登ったことのない私が一歩一歩苦しく登っているその上で、ヒマラヤユキバトが空を飛び交い、気流に乗って滑空していました。太陽が沈んだ後、真っ暗闇の標高5000メートルからみる星空は恐怖を感じるくらいの迫力です。しかし、清心の女の子ワールドで育った私にとっては、そんなことよりも何よりも、山岳部の山男の世界を体験したことが最も衝撃的だったように思います。
 怒涛の4年間でしたが、その間に本当にたくさんのフィールドに出かけ、たくさんの人に出会い、多くのことを学びました。今年の4月からは大学院生です。研究テーマである田園景観に集中し、さらにフィールドに入り込んでいきたいです。

『アンテナは広く』
常にアンテナを清心の外に張っていてください。そこに引っかかったものにはなんでもチャレンジ!受身では何も始まりません。まずはやってみて、うまくいっても、うまくいかなくても、それなりに自分の力になっているはずです。高校時代にしかできないことにたくさん挑戦してみてください。

権 明香
岡山大学 医学部 医学科5年

権 明香 岡山大学 医学部 医学科5年

私は小学校3年生のときの転校先でいじめにあいました。そのとき精神科医である父に助けてもらいました。と同時にどうしてひとはいじめをするのだろうと、このときから人の心について興味を抱くようになりました。また医師という職業は常に勉強していかなければ、最善の治療を行うことができません。大変ですがとてもやりがいがあり、ひとの役に立つことができる職業です。このような理由で私は医学部を選択しました。

岡山大学医学部では1年から3年までは基礎医学、四年で臨床医学を学びます。5,6年は今まで学んだ知識を活用しての病院実習です。わたしはちょうど臨床医学を学び終えたところです。基礎医学と臨床医学、両方の面白さと難しさを垣間見、医学という分野の広さと深さを感じました。基礎医学は生理学、解剖、病理学などを学びますが、目に見えないけれども人体が精巧に制御されている仕組みがとても面白いです。どのように新しいことが解明されているのか興味を持ったので、空き時間に研究室で実験の手伝いをさせてもらっています。たった一つの事実を証明するのにも大変な過程を経ることが必要なのを身をもって体験しています。臨床医学の授業では病気が起きる仕組みとその治療を学びましたが、実践的な内容なので刺激的で、基礎医学とは別の楽しさがあります。5年生からの実習は不安もありますが、医学から医療の勉強に移行するので期待でいっぱいです。

皆さんには生命科学だけではなく、様々な分野の本を読んで、広い視野で考えられるようになって欲しいです。生命科学の分野は、純粋な科学だけでなく倫理など様々な分野をからめて考えなければならない問題が多いと思います。そのときいかにバランスのとれた考え方ができるかがとても大切になってくるのではないでしょうか。また人との出会い、関わりを大切にしてください。人との出会いで人生が変わることもあります。私は高校2年生のとき、数理の翼セミナーという1週間の合宿に参加しました。そこで出会った超一流の科学者や想像を超えるほど優秀な学生たちによって、わたしの人生観は完全に変わりました。今はまだそこでの体験を生かしきれてはいませんが、あの1週間は私の人生の中でかけがえのないくらい大きなイベントです。後輩の皆さんも学校という枠にとらわれず、自ら面白そうなことを探し出してください。そして積極的に自分の世界を広げ、失敗を恐れずに色々なことに興味を持って取り組んでください。

黒田 亜弓
鳥取大学医学部保健学科看護学専攻4年

黒田 亜弓 鳥取大学医学部保健学科看護学専攻4年

私は医療に興味を抱いていたので、高校生の時に看護体験やボランティアに参加しました。その時、笑顔で患者さんに接している看護師さんの姿に感銘を受け、看護の道を目指す決意をしました。鳥取大学では1年生は鳥取市にある湖山キャンパスで心理学などの教養科目や専門基礎科目について学びました。また夏休みに初期体験ボランティアというものがあり、看護師の仕事や人との関わりについて学びました。2年生になると米子キャンパスに移動になります。米子キャンパスでは、看護について基礎的な分野や専門分野について学びました。2年生の冬休みには初めて患者さんを受け持ち、患者さんの思いに寄り添う看護の大切さについて学ぶ機会がありました。3年生からはいよいよ実習が始まりました。実習は授業で学んだ知識だけでは実践できません。患者さんから教えてもらうこともたくさんあります。患者さんに満足してもらえる看護は心・技・体のバランスが十分でないと実践できないと思います。4年生となった今は6月から始まる助産学実習に向けて、学内で勉強しています。助産というのは、お母さんと赤ちゃんの2人に命を預かる責任ある仕事だと思います。そして助産の基本は看護であると思います。これから始まる助産実習では看護の実習で学んだことを生かしながら頑張っていこうと思います。私はこれからも患者さんから学ぶという姿勢を大切にし、経験を積み重ねていきたいと思います。生命科学分野への進学を考えておられる皆さん、高校生の時には高校生にしか出来ないことがあると思います。今興味があることは何ですか?少しでも興味があることは、どんどん挑戦してみてください。いろいろなことを経験する中で、自分が本当にやりたいことがだんだん見つかってくると思いますよ。

斎藤 あい
香川大学 医学部 医学科6年

斎藤 あい 香川大学 医学部 医学科6年

在校生の皆さん、はじめまして。早いもので清心を卒業して5年が経ち、私は今、香川大学医学部医学科の5回生で、臨床実習をひととおり終えようとしています。私が医学部を志望した理由は、人を助ける仕事であること、精神医学に興味を持っていたことでした。実際に入学してみると、大量の情報量を処理しなければならなかったり試験に追われたりと忙しく過ごしており、そんな中でも部活に打ち込んでみたりと充実した日々を送ってきました。ようやく患者さんの前に出て診察させていただいたりお話を伺ったりするようになり、勉強不足であるとよく思いますが、何より大切な事は、人と向き合ってコミュニケーションがとれることだと感じています。医師は病気を診るだけではなく人を診なければなりません。初心を忘れず、がんばりたいと思っています。

さて、医学部では女性が少ないという印象をお持ちの方が多いのではないでしょうか?実際、私の学年には女性は4分の1しかいません。しかし、年々女性で医師を目指す方も増えており、学生では平均して3分の1くらい女性だと思います。ここで、女性でこうした職業を目指すのに大変であろう、良いだろうと思うことを挙げます。大変なことといえばやはり、分野(内科、外科等)によっては結婚・出産のため継続して働くことが難しい場合があること、体力的に難しい可能性があることなどです。しかし、女性であってよかったと感じることもあります。例えば、患者さん(特に女性の)と会話する上で女性医療スタッフは欠かせないということは実習がはじまって痛感しました。

最後に、生命科学の分野を目指す皆さんへ、3つアドバイスをしたいと思います。まず一つ目は、理系でも特に英語を頑張って勉強してほしいということです。英語は大学でも社会に出てからも、実践で必ず必要になります。また国際感覚を養うという意味でも、チャンスがあれば是非外国の方と交流してみてください。二つ目に、勉強だけでなく、大勢の人との関わりや社会性を高めることです。せっかくカトリック校に在学しているのですから、キリスト教を通じて命の尊さや道徳について、再確認してみてはいかがでしょうか?三つ目に、(これはゆとりがある人でよいですが)部活動などに参加してみてください。その中で、人と人との関係を築くこと、集団の中における自分の位置を把握してその役割を果たすこと、自分の行動が持つ責任を自覚することといった経験を是非していただきたいと思います。後輩の皆さんが今後も素晴らしい活躍の場に恵まれますようお祈りしております。

山下 ユキコ
広島大学大学院 医歯薬学総合研究科 展開医科学専攻
病態薬物治療学講座 臨床薬物治療学研究室 学部4年生

山下 ユキコ 広島大学大学院 医歯薬学総合研究科 展開医科学専攻 病態薬物治療学講座 臨床薬物治療学研究室 学部4年生

私が薬学を志望した最初のきっかけは、現在の医療ではほとんどの疾患において薬物治療が主流であるので、研究者として新薬の開発に携わりたいという思いからでした。ですが、実際に薬学科に入学し、さまざまなことを学び実際の医療現場にふれる中で、実際の現場の中には数え切れないほどの医薬品があふれかえっており、適正に使用されていない現状があることを知りました。本来この点を改善するべきである薬剤師も、この現状に十分に対応しきれておらず、薬剤師はもっと積極的に医療現場に出て行きチーム医療の一端を担える力をつけなければならないと痛感しました。そこで私は、現在、医療現場で活躍できる臨床薬剤師の育成を掲げている広島大学臨床薬物治療学研究室に在籍し、実際の医療現場で、医師、看護師、そして患者さんと触れるなかでいろいろなことを経験し、薬剤師として医療人として何が求められているのかを勉強しています。また、医薬品の適正使用を推奨すべくさまざまなテーマに取り組み日々実験に励んでいます。

生命科学分野と言っても医学・薬学・遺伝子工学などをはじめ非常に多岐にわたりますが、この分野すべてに共通するのは「命と向き合わなければならない」ということです。「命と向き合う」と言葉で言うのは簡単ですが、これはとても難しいことです。基本となる技術や知識を身につけ、しっかりとした土台を築くことは当然必要ですが、最も大切なのはその人の倫理観です。技術や知識は努力しだいであとからなんとでもなりますが、倫理観というのはその人のそれまでの生き方や考え方が反映されて構築されていくものなので、教育を受けてにわかに育つものではありません。倫理観というのは、教えるものでも教えられるものでもなく、自分が生きていく過程での経験や人との出会いの中で、悩み、考え、感じながら作り上げていくものではないかと思います。私自身も、医療現場の中で医師や看護師をはじめ必死に病気と戦う患者さんやそのご家族にふれる中で、命と向き合うことの意味や難しさを痛感する日々です。

もしみなさんが、将来の進路として人や命と向き合う仕事を考えているなら、まず自分の今の生き方を見つめなおして、しっかりと自分を鍛えてほしいと思います。自分にふりかかるさまざまな出来事に対して、投げ出さず前向きに取り組みながら、出会った人々との関係を大切にし、自分の頭で考えて、時には自問自答を繰り返しながら一歩ずつ前に進んでいってほしいと思います。そのなかで、思いやりの気持ちや相手を理解するやさしさが生まれてくるのだと思います。目の前の出来事に対して、合理的に損得だけで判断するのではなく、すべてが自分に与えられたチャンスだと思って一生懸命取り組んでほしいと思います。もちろん、机上の勉強ができることも重要です。ですが、それだけでは全く意味がありません。自分で考える力、何かを創造する力を身につけ、自分の生き方に誠実でありたいと日々努力を重ねていくことこそが、とても大切なのだと思います。この生命科学コースは、みなさんにさまざまなチャンスを与えてくれるのではないでしょうか。みなさんが、そこからいろいろなことを学び、命と真正面から向き合える人間性豊かな立派な人材となってくれることを期待しています。

志田原 早苗
医療法人杏雲会・志田原クリニック 歯科・小児歯科

志田原 早苗 医療法人杏雲会・志田原クリニック 歯科・小児歯科

1983年に歯学部を卒業し、ほぼ10年間、大学の医局、東京での勤務医時代を経験した後、故郷である福山に帰ってきて、はや15年になろうとしています。私が歯科医になって20数年、歯科技術の進歩には、日々目覚しいものがあり、少しでも目を離すと、いろんな常識が全く別のものになってしまうということが多々あります。

例えば、私が学生の頃は、虫歯は治らないものとされ、早期発見、早期治療が、当然のように推し進められて来ました。しかし現在はカリオロジー(う蝕学)の研究が進み、虫歯は、脱灰(溶ける)と再石灰化(また硬くなる)の間を揺れ動く状態であり、条件を整えることにより、軽い虫歯は治るということが、分かってきました。ですから今は、早期発見、早期治療ではなく、早期発見、早期予防が常識となっています。

また、高齢化に伴い、毎日多種多様な(大量の)お薬を常用している人が増えています。薬というものは必ず、その目的である薬理作用の他に、好ましくない作用(副作用)を持っています。それらが加齢現象等とも複雑に絡み合い、お口の中にも様々な不快症状を引き起こしてくることも多くなりました。そのようなことにも、私たち歯科医は丹念に対応していく必要が生じています。

それから、今の最先端といえば、再生医療でしょう。細胞を用いて、失われた組織や臓器を再生するためのティッシュエンジニアリング(組織工学)の考え方が発達して、再生医療の研究が進んで来ました。歯科においても、次々と新しい療法が考案され、それが実用化されています。

私たちは、国家試験を経て歯科医師免許を手にした時、男も女も出身大学も関係なく、皆一斉のスタートラインに並びます。そこから、各々が何を目標に、どのように研鑚を重ねてゆくかで、それぞれの道が分かれるのです。次々と新しい治療法が開発されたり、また、新興感染症が世間を騒がせたりする今日この頃ですが、常に、正しい情報を患者様や、地域に伝えることも大切な仕事です。そのために、日々研鑚は、私たちの義務であり、この仕事をする限りは一生続けていかなければなりません。

・・というと、「なんだか大変そう」と、気が重くなられましたか?しかし、決してそんなことはないのですよ。この仕事の良いところの一つに、自分が努力すればしただけ必ず、人の役に立てた喜びや、やりがいに繋がるということ、充足感を得ることが出来るということがあると思います。もちろん、あの時ああすれば良かったと、反省することも多々ありますが、この仕事の魅力は、毎日、同じ日が一日としてないことを実感できる充実した日々を過ごすことが出来ることだと思います。

小寺 志保
京都薬科大学 薬学部 生物薬学科 微生物学教室 4年

小寺 志保 京都薬科大学 薬学部 生物薬学科 微生物学教室 4年

私は幼い頃から喘息もちで、小学生の時はいつ発作が起こっても対処できるように、毎日ポケットに薬を持ち歩いていました。進路を考える際に、そんな一番身近で当たり前の存在であった薬に改めて目を向けるようになりました。そして、息苦しさをワンプッシュで吹き飛ばしてしまう薬の神秘性に魅せられ、薬学への道を志すことに決めました。薬学部のカリキュラムは薬に関することはもちろんですが病気や健康、環境衛生などを含んでおり、日常生活に密着していることから、親しみやすく学び甲斐があります。大学3回生からは講義も専門性が増し、今までバラバラだった知識が徐々に繋がるようになりました。また、個体レベルの生命現象を臓器レベルや細胞レベル、分子レベルで説明するなど、マクロの視点に始まりミクロの視点へと物事を見るという考え方も少し身に付いたように思います。まだまだ学業の途上ではありますが学問におもしろみを感じてきたところです。「病院薬剤師になるにしろ研究者をめざすにしろ、薬剤師は薬の先に患者がいることを心にとめておくようにしなければならない」と教わりました。清心で学んだ人たちは、その心の優しさから生命の尊厳を根本とする生命科学分野においても、より活躍できることと思います。進みたい道が決まったならば、粘り強く頑張ってください。

小林 紀子
筑波大学 第二学群 生物資源学類 3年

私が今の進路を選んだ理由としては、性格的に自分の興味を持てるものをやりたいという気持ちが人一倍強かったからだと思います。納得できるもの、自分が興味関心があるもの、さらに、学んでいく価値があると感じたからです。そのため、自分の見つけてきた、ほかの人とは少し違っていること、夢中になれることに高校時代に出会うことができたことが一番の幸運だったと思います。それは、どこに転がっているか分からないので、広いアンテナでいつも見落とさないようにすることで、自分の志望進路を見つけることができたのではないかと思います。

私が進んだのは、農学の環境系ですが、たくさんの小さな要因が重なって、この進路に決めることができました。広島県出身ということもあって、平和教育や戦争の悲劇について興味があったこと。自宅が自然の多い所なので、農業を間近で体験したこと。清心で中高時代をすごしたこと。科学に興味があったこと。すべての要因が重なり、ある最新技術を知ることで、要因が関係性を持ち、私の将来が変貌したのだと思います。大学は、その一歩で、ゴールではなく、ステップであると思っています。私は、二年生なので、去年に引き続き、基本分野の勉強が多いです。ただし、基本だが、去年までやっていた数学類や科学類、基礎科目ではなく、分野に一歩足を踏み入れた基礎が多くなってきました。たとえば、分子生物学・生化学・環境科学・スペクトル解析などのものや、それらの演習・実験・さらにプレゼンをしたりしています。私の通っている生物資源学類では、化学・生物・工学・経済学といった幅広い分野を個人の意欲と興味に応じて選択し、学習できるため、一人一人違ったカリキュラムを自分で作成することができます。私は、主に、生物、化学、経済学を化学系を中心にとっています。さらに、他の学類の授業も自由に取れるため、哲学や社会学、経営学、民俗学、言語学なども取ることができます。そのため、多くの一見関係なさそうな知識や学習が、見えないところで自分の糧になっていることも少なくありません。また、有機化学を学ぶことで、生化学のイメージがつかみやすくなり、分子生物学や環境科学、その他のものにもつながっていくことが多いです。また、実験をすることによって、講義の内容も理解しやすくなります。実践を考えた、基本的な作業を練習しているので、充実しているし、面白くなってきたと思います。

治部 眞里
文部科学省 科学技術政策研究所 上席研究官

清心の丘を最後に下ってから、はや20年という月日が経とうとしています。理系進学をバックアップできるような作文をという依頼で書き始めたものの、よく考えると私はノートルダム清心女子大学文学部英語英文学科卒業のため、理系進学を希望される方のお役には直接立てないかもしれませんが、お許しを。

卒業後、人間の「意識」を解明したいと志を抱き、自然科学者の道を歩み始めました。幸運にも大学の研究所で、すばらしい師と出会い、その師に導かれて意識の源である脳の機能を物理学の理論である場の量子論の枠組みを使って解明する研究に取り組みました。 その過程で、岡山大学医学部から「医学博士」を取得し、科学者の道を順調に進むつもりでした。それが、1999年に国連大学高等研究所と共同で開催した「意 識の科学に向けて」という国際学術会議をきっかけに、サイエンスコーディネーターとして科学と社会の橋渡しの役割を担う道を模索し始めたのです。そのためにカナダの名門McGill大学大学院MBAコースを受験。McGill大学大学院MBAコース東京校で、毎週末毎に経営学を勉強しました。 そんな非常に変わったキャリアパスのおかげなのでしょうか、この4月1日より文部科学省科学技術政策研究所上席研究官として、世界をリードする質の高い科学技術人材の養成・確保する国の政策を立案するための 調査研究を行っています。

非常に複雑怪奇なキャリアパスを歩んできた私が後輩である皆様にいえることは たった一つ。「逍遙遊とたゆたって下さい」そうすれば、本当に自分がしたいことが自然と聞こえてきます。そしてそれを信じて、どんな事があっても諦めてはいけません。続けていれば、必ず 道は開けます。道が開けたら、寝ても覚めても、そのことを深く々追求して下さい。絶対に何かができるはずです。お互い頑張りましょう。

水野 郁子
湧永製薬株式会社 ヘルスケア研究所

水野 郁子 湧永製薬株式会社 ヘルスケア研究所

小さい頃から理科が好きだったことと、「就職と大学は別!」と割り切っていたので、後の就職のことは考えずに、大学では好きな分野に進んでみようと思っていました。現在は、製薬メーカーに勤務しています。大学では植物を勉強していましたから、未知の分野ではあります。しかし根本的には、対象が植物からヒトや動物へ変わっただけで、同じ"生き物"を対象とするところで仕事をさせて頂いています。生徒の皆さんには、興味がもてることをひとつでも見つけてほしいと思います。受験や就職などで迷った時は、「(私は)どんな時が楽しそう?どういう職業が合いそう?」と、自分を良く知る家族や友人に聞いたりもしました。また、理系だからといって研究者になる人ばかりではありません。同じ学部から文系学部へ編入した人や、マスコミ、金融、IT関連の会社に就職し活躍されている人など様々です。一般的なイメージに捕われることなく、自由な発想でがんばって下さい。

浅井 樹里
京都薬科大学 薬学部 薬学科 4年

浅井 樹里 京都薬科大学 薬学部 薬学科 4年

私が薬学を選んだ理由は同じ寄宿舎で生活していた友人がきっかけでした。その友人は何種類もの薬を一度に飲んでおり、心配になった私は「違う種類の薬を併用して大丈夫なの?」と聞きましたが「大丈夫!」といってそのまま飲み続けました。幸いその友達には何も起こりませんでしたが、「きっと薬のことをよく分かっていない人は世の中にたくさんいるのだろうなあ、将来薬剤師になって正しい知識を広めたい」と思いました。以前から薬学に興味を持ってはいましたが、本当の意味で薬学を自分の将来の進路に決めたのはこのときだと思います。しかし当時の私の成績で京都薬科大に合格するのはかなり厳しい状況でした。そのためそれからは猛勉強しましたが、なかなか結果はついてこず浪人も考えていました。結果的に運も味方につけたおかげ(?)か今の大学に入ることができました。

現在私は大学の研究室に配属されて、アロマテラピーで用いられるイラン-イランオイルについてヒトを対象に研究を行っています。4回生になると毎日授業があるわけではないので、授業のない日は午前中から、授業のある日も午後から研究室に行って夕方まで実験をしています。実験の進み具合によっては夜遅くなることもあります。これを読んだ人の中には毎日実験ばかりで大変そうだなあと思われるかもしれませんが、研究室のメンバーで飲み会やバーベキューをしたりして息抜きをすることもありますし、教授や大学院生の方ともとても仲良く、話をしながらお茶をすることもあり私は研究室が大変だと思ったことはなく、むしろ本当に楽しんでいます。大学の授業や試験は入学する前に想像していたものよりも難しく、学年があがるにつれて専門的になり、毎年留年する人も少なくありません。だから中途半端な気持ちでは続けられないと思います。でも一緒にいる時間が長いのでいろんな話をしたり、研究での大変さを分かち合える大切な仲間はできました。私もこの忙しさと大変さゆえに他の学部の友達をうらやましく思ったこともありましたが、今では本当に薬学を選んでよかったと思っています。

これからはself medicationつまり病気にかかる前に自分たちで予防しようという考え方が浸透していくと考えられています。その中で薬剤師はとても重要な役割を担うことが期待されています。さらに薬学部も2006年から6年制になり、より専門的な知識をもち、コミュニケーション能力に優れた人材が強く求められます。また薬学部は他の医療系の学部よりも就職の選択肢が広いのが特徴です。私自身も病院や薬局の薬剤師としてではなく治験に関わる仕事に就きたいと考えています。人と関わるのが好きでより多くの人の健康作りの役に立ちたいと思っている人は、ぜひ薬学の道へ進んでみてください。

前田 由貴子
高知大学 農学部 生物資源科学科 3年

前田 由貴子 高知大学 農学部 生物資源科学科 3年

私は高校2年で文理選択する直前まで英語を使う進路を考えていました。ところが、その当時急にアミノ酸のような健康食品がブームになって、食品の成分について知りたいと思うようになったのが理転のきっかけでした。それから、この病気にはどんな成分が効くのだろうとか、痩せるにはどんな成分がいいのだろうとか、知りたいことが増えてきて迷わず理系の進路に、そして大学は食品の機能を研究しているところを志望しました。

私は高知大学 農学部 生物資源科学科の2回生です。実は研究室配属が3回生の後期からなのでまだ研究をしていません。1回生の間は教養を身につけるため心理学や哲学などの授業がありました。2回生の今は研究の練習ということで毎日学生実験をしています。実験は生物資源科学科にある全部の研究室の先生が交替で、それぞれの専門分野の基本的な実験をしています。毎回実験のレポートがあるので、みんな図書館にこもりきりの生活を送っています。また、授業では有機化学、生化学、無機化学、分析化学などとにかく化学ばかりです。

大学の先生が言っていたんですが、理系の研究は根性と興味と情熱がないと続かないものです。根性と興味と情熱のある人にとって理系の研究は充実したものになると思います。それから、理系に限らず大学は自由で楽というイメージがあるけど、実際はかなり勉強が専門的で難しいし大変です。大学は自分から学ぶという点で自由なところなので、やる気がないと単位を落とすことになりかねないので気をつけてください。最後に、次の言葉は私が大学に入学して最初に先生から教えてもらったことです。「医学は個人を救うが、農学は人類を救う」

村上 緑
産業医科大学 医学部 医学科 2年

村上 緑 産業医科大学 医学部 医学科 2年

私は将来の進路を考えたとき、人と接し人の役に立て、一生続けられる職業につきたいと考えていました。高校のときは生物が好きで、生き物の不思議さ、自分の身体の中で起こっていることについて興味を持ち医療に関わっていきたいと思うようになりました。このきっかけとなったものの中に、発展科目の「生命」の講座を受講したことが挙げられます。このなかでは普段の授業では学べない臓器移植や薬、心の問題などについてより深く学び、考えることができました。また外部の専門家の方による講義も多く進路について考えるのにとても役立ちました。人が豊かに暮らしていく中で重要な心身の健康を支える医療に携わっていきたいと考えています。今は、それぞれの病気の治療法について学ぶのではなく、人の身体の機能・構造、仕組みなどを主に学んでいます。内容としては高校生物を発展させたようなもので、人の細胞の中で行われていること、DNAについてなどを中心に基礎医学と呼ばれるものを学んでいます。癌や生活習慣病などの、身近な病気の原因や進行についても学びました。各講義には実習があり、講義の内容を自分たちの手で実験を行うことにより理解も深まるので、大変ですがとても楽しいです。講義は毎日朝から夕方まであり、選択科目は少なく必修の科目がほとんどなので、全員で同じ講義を受けています。学校の規模は小さいですがサークル活動も盛んで、体育会系、文化会系それぞれたくさんの部活があり、大会や定期公演などに向けて活発に活動をしています。部活に入ることによって多くの先輩と知り合うことができ、一人暮らしをしながら学生生活を送る上での学業や生活全般のアドバイスをもらったり、相談をすることができ、とても心強いです。今、生命科学の分野は急速に発展しており、次々と新しい発見がなされています。いろいろなことに興味を持ち、調べたり挑戦したりすることが大切だと思います。大学は文系の学部と違い講義も多く、実習がある日は終わるのが遅くなったりとハードで大変なことも多いですが、友達と協力しながら毎日を過ごしています。生命科学の分野は難しいと感じるかも知れませんが意外と生活に密着した学問であり、驚きや発見がたくさんあり楽しいですよ。

中浦 嘉子
福山大学 生命工学部 応用生物科学科 食糧資源科学研究室勤務

中浦 嘉子 福山大学 生命工学部 応用生物科学科 食糧資源科学研究室勤務

私が生命科学、特に遺伝学の分野に興味を持ったのは清心在学中に受けた生物の授業がきっかけでした。授業でメンデルの法則について習い私達の目や鼻、髪の色はすべて遺伝子によって決定されており、またその決定は遺伝子であるDNAによって制御されているという事実を知り大変興味を持ちました。また、その頃バイオテクノロジー技術の著しい発展もあり、ますますDNAの働くメカニズムについて学びたいと思うようになりました。

現在私は、福山大学 生命工学部 応用生物科学科で技術助手として勤務しています。私が所属している食料資源科学研究室は、主にイネやトウモロコシ、小麦といった穀物の澱粉を研究材料としてその構造や物理科学的特性を明らかにすることでおいしい穀物の研究開発を行っています。また、米の澱粉生合成酵素を遺伝子レベルで制御することにより作出された形質転換米の胚乳澱粉の分子構造と糊化・老化特性を調べることにより、近い将来自由に米澱粉の性質を制御できる澱粉工学の確立を目指しています。

20世紀は科学技術や産業の発展により豊かな物質文明を形成し、人々のライフスタイルを変えてきました。その反面、地球温暖化、環境破壊、生活習慣病などの多くの課題も生み出してきました。これら20世紀の問題は21世紀を迎え深刻さを増し、緊急の対策が必要となっています。生命科学とはまさにこの緊急事態に対応し、豊かになった生活を維持、発展させることだと私は考えています。生命科学は今最も必要とされている学問であり、現代社会に対する影響力はこれからより一層大きいものになっていくでしょう。生命科学を学ぶということは安全面や倫理面において大きな責任を担わなければなりません。しかし、そのような大きな責任があるからこそ喜びも大きいのです。この地球規模の危機的状況を打破することができるのは生命科学を学ぼうとしているあなたです!!地球人として地球に住む限り地球と地球上の全ての生物が共存し、幸せな生活を送ることができる優しい環境を共に目指していきましょう!

藤井 裕子
香川大学 医学部 医学科 4年

藤井 裕子 香川大学 医学部 医学科 4年

病院へ行くことを拒み40年以上も医者の世話になったことがなく、私のカナダ留学を心配しながら今年も元気にお正月を迎えた祖母が、緊急入院した。力なく管や注射針を入れられたまま、すべてを委ねるように横たわる病院のベッドの傍らで、私は今改めて医師としての使命とは何かを考えさせられている。

私が医科系を目指すことになった理由は、母の入院、祖父や身近な友人の死から、命を救いたいという強い気持ちを持ったこと。また中高時代のカトリック精神に基づいた学びの中から、人のために働きたいと思っていたことからである。

大学での教養の時期は、学科の勉強以外に医療のあり方やどんな医師になりたいのか、講義やディベートを通して医師としての倫理的役割を知るものであった。2~3年では主に、人体内メカニズム(生化学、生理学、薬理学)を学んだり、解剖実習に明け暮れた。試験管や顕微鏡を使って生物化学的な組織構造や反応結果を模式図として、また数値として処理する。このような形式だった論理や知識は医学の発展や先端医療を行う上での基礎となるものであると思う。

しかし、十人十色の人生背景や性格を持つ病と闘う患者さんや、全身に刺青のある献体された方の前にメスを持って立つようなとき、医学の道とは決して理数学的分野だけに解決されるものではなく、むしろ人文学的分野に裏付けされ支えられるべき終着点のない学問であると思えてくる。人はみな生まれたその日から死という未来に向かって走っているわけであるが、病の延長を死と見据えたとき、医師は患者さん達が今までどんな人生を歩んできたのか、その後どんな死を迎えるのがよいのかを洞察し、共感する心を持つ必要があると思うからである。

私は大学に入るまでは医師とは人を死から生の方向へ引き戻そうとすることが使命であり、それがその人のためであると思っていた。しかし状況は様々である。高度な医療を求めてただただ延命を望む方、安らかになるよう死を迎えたいと望む方・・そうした千差万別の患者さんに対応できる医師像を、学生である今もそして医師となってからも探し、発見を繰り返すものだと思っている。
高校で進路を考える場合、その時の将来に対する理想や信念は、長い人生の過程での一側面にしか過ぎないのかもしれない。しかし、かたちをかえながらもそれらを基に将来の自分が創り上げられていくのだと思う。自分に何ができるか、何をしたいかと自分に真剣に向き合い考えて、常にそれに向かって小さなことでも努力していって欲しいと思う。

藤原 千穂
鳥取大学 農学部 生物資源環境学科 応用生命科学コース 2年

藤原 千穂 鳥取大学 農学部 生物資源環境学科 応用生命科学コース 2年

生命科学の分野に興味を持ったのは、中学1年生の時に受け持ってもらっていた理科の先生が大好きだったのがきっかけでした。教科書の上だけではなく、先を見越したことや時事的なことも教えていただくうち、理科という分野自体に徐々に興味を持つようになりました。次第にそれが生物という分野に固定され、理系進学を考えるようになりました。高校生の時に受けた「生命」という発展科目に刺激され、知りたいという知識欲と、知った知識を生かして地球やそこに生息する生物に還元していきたいという思いを持つようになり、現在の大学に通っています。

現在は鳥取大学農学部の生物資源環境学科に2回生として通っています。農学部といっても、農業だけを学ぶわけではありません。流通や統計といった経済、バイオサイエンスや環境科学、遺伝学や昆虫機能学など、科目は多岐にわたっています。1年間の教養基礎科目を就学した後、2年次からは各々の興味関心に合わせて7種のコースに分属し、40人ほどの小グループに分かれて専門的な講義や実習を受けられるようカリキュラムが組まれています。

大学受験には、一定の学力も必要です。だからといって、知識をただ詰め込むだけでは意味が無いのではないでしょうか。ただ勉強という枠に押し込めたままでは、せっかく抱いた興味関心が宝の持ち腐れになってしまいます。テストのために覚えるのではなく、興味深く追及しているうちに頭に入るという知識の蓄え方をしてください。そうして得た知識は、大学受験のみならず、その後の進学先でもおおいに役立つだろうと思います。清心学園に通っていたおかげで、私は今こうして理系に進んでいます。塾にも行かず、通信学習などの補助的な教材も使わず、清心学園での勉強のみで、私は自分の興味関心を深めながら大学受験を乗り越えることが出来ました。清心学園に通うことで、自分の力を認め、伸ばしてくれる先生に出会えることを保証します。

藤原 理恵
川キリスト教病院  研修医
平成17年3月 岡山大学 医学部医学科 卒業

藤原 理恵 川キリスト教病院 研修医 平成17年3月 岡山大学 医学部医学科 卒業

理想の医師とは、今求められる医師とは。大学受験に始まり今に至るまで何度となく聞かれ、また自らも常に問いかけています。「教科書の塊」の医師にはなりたくない。多くの人に出会い、様々なものに触れ、沢山経験したい。学生生活を振り返ると、沢山海外旅行もしたし、家庭教師や予備校などでのアルバイトは良い社会勉強になりました。基礎医学研究のためのアメリカ留学やイギリスへの臨床実習も経験し、大変充実した学生生活だったと思います。

そんな私も医学部に入学してはや6年、この3月で卒業を迎え、いよいよ研修医として働くこととなりました。私が医師になりたいと思ったのは確か中学時代で、医療に対する憧れからでした。そんな単純な動機しかなかった私が、高校時代に山崎章郎先生の「病院で死ぬということ」という本に出会い、医師を目指す気持ちが大きく膨らんだのを覚えています。その時ホスピスに興味を持ち、それがきっかけで、現在ホスピスを備えた病院に就職することになりました。国語の教科書以外本を読まなかった私のお勧めの1冊です。特に医療に携わる仕事を目指している皆さんは、医療とは、人と死、患者さんと○○、などきっと考えさせられることがたくさんあることでしょう。

皆さんの理想の○○、求められる○○とはどんな姿ですか。そんなはっきりとしたことは分からない、と思われる方も沢山いらっしゃるでしょう。別に明確な考えを持つ必要はありません。むしろそれを見つける過程が重要ではないかと私は考えます。感受性の高いこの時期に、決して自分の未来について考える努力を怠らないで下さい。理想の○○が想像できたとき、目標に向かう意志は無限大になるはずです。

藤本 悦子
大分大学 医学部 医学科 4年

藤本 悦子 大分大学 医学部 医学科 4年

私は今、医学部でヒトの体について学んでいます。そもそも私が医学部を選んだのは、恥ずかしいですが父の職業がそうであったというのが最も大きな割合を占めるでしょう。他の人よりも"医師"という選択肢が身近にあったことは否定できないことです。それに加え、生物等の授業を受けたりしていく中でヒトの体のメカニズムはすごいなと思うようになったのです。こんな簡単な流れで医師になろうと決意した当時の私は、まだ医学部に合格することがどんなに大変か実感できずにいました。壁の高さを知ったのは、実際、初めて他校の不合格通知を受け取ったときです。

しかし、運のいいことに医学部に合格してからは1年半の教養分野を終え、2年後期からようやく専門分野を学び始めました。今はちょうど専門分野に入って1年4ヶ月が経ったところです。系統解剖から始まり、1つ1つの科(コース)を学んでいく中で、いつもヒトの体はどんなものよりも精巧にできていると感心してしまいます。高校のときに感じたものより何十倍、何百倍もの驚きがあります。こんなに毎日毎日病気のことばかり学んでいるのに、自分が不自由なく生活していることを不思議に思うことさえあります。今まで言葉では健康でいることがありがたいと言っていましたが、つくづく実感します。1人でも多くの人がこんな感じを抱けたら幸せだと思いますが。

みなさんは今、"やりたいこと"があるでしょうか。読書・料理・ダンス・・・何でもいいのです。ふとしたことで自分が興味をもったものにはまずチャレンジしてみてください。きっとそこからたくさんの人やモノに出会い、可能性が広がるはずです。そうするうちに、いろいろなものを秘めた素敵な人になっているかもしれません。しかし、まず、本業あってのことなので、みなさんにとっては勉強になるでしょう。それに色を加えていくことでその人なりの個性がうまれてくると思います。

藤澤 知代
岡山県立大学 保健福祉学部 看護学科 2年

藤澤 知代 岡山県立大学 保健福祉学部 看護学科 2年

私は、高校二年生まで他の学部への進学を考えていました。しかし、三年生の春休みを期に希望する進路を看護学部に変更しました。それは、手術を受けたことがきっかけです。私にとっては、その手術は初めての経験であり、手術中、今何が起きているのかも把握出来ず緊張し、常に不安でした。その中で、看護師の方が常に側にいてくださり、体調を気にかけ、励まして下さいました。そのような看護師の姿を間近で感じ、私も患者さんにとって身近で、心強い存在の看護師になりたいと思い、看護学部への道を決めました。それからは、ボランティアや看護一日体験などに参加し、ますます看護に対し関心を抱くようになりました。

大学では実習先や授業などで、高校生の時に比べ、意見を求められることが多いと感じます。授業では、一年次から国家試験を目標とし、「薬理学」や「解剖生理学」を学んでいます。そして昨年の夏休みには、その知識を基に岡山大学で人体解剖の見学をさせてもらいました。また、今年からカリキュラムが変更し、一年次から実習をさせてもらっています。「看護学方法論」(ベッドメイキングや血圧測定の仕方を習う授業)を基に、今まで二個所の病院で実習をさせてもらいました。一個所目は、学生が主体的となり自らが希望する病院へ実習を頼み、一人一人が別々の病院で三日間、見学実習をさせてもらいました。そこでは、看護師の方の補佐をさせて頂きながら、実際の看護師の職業を身近で見学させてもらいました。二個所目は、大学からの指定の病院で二週間、実習をさせてもらいました。そこでは、一人一人が患者さんを受け持たせて頂きました。基本的な技術しか行えないので、主にコミュニケーションに重点をおいた実習でした。患者さんを受け持たせて頂くことで、実際の患者さんとの接し方や看護の役割について理解を深めるなど、授業や実習を通して、一年次から本格的に看護を学んでいます。

私は、希望する進路が決まり、志望する大学の受験科目に化学や数学IIがなく、高校時代は勉強する必要はないと考えていました。しかし、実際に大学へ入学すると、必須科目の中に「生化学」や「統計学」があり、数III・Cの内容をも必要とされました。受験科目でなくても、今まで学んできた科目も勉強し続けることをお勧めします。生命科学分野に進学される皆さんの多くは、大学卒業後は国家資格を得るという目標があるため、大学生活は忙しいものになるかもしれません。しかし、目標が定まっているので、充実した毎日を送れると思います。皆さんにも、自分が最も希望する進路を見つけ、歩んでいって欲しいと思っています。

内藤 三美子
高知大学理学部生物学科卒業

私は今からちょうど15年前に清心女子高校を卒業し、高知大学理学部生物学科(現・物質科学科)へ進みました。皆さんは進路について、今どう感じておられるのでしょうか。幼い頃から夢があり、それに向かって精進している人もいれば、ただなんとなくここまで来て、さてこれからどうしようかと悩んでいる人もあり、いろいろあることでしょう。私自身の高校時代は後者でした。自分が何を職業としたいのか、どんなことに興味があるのかわからないまま、ただ漠然と一日一日を不安な思いでやり過ごすような高校生活でした。振り返ってみてわかったことですが、進路を選ぶにあたって大きな影響を受けたのは人との出会いでした。進路を選んだというよりは、出会いによって進む道が決まったという方がよりあてはまるかもしれません。もちろん人との出会いによって影響を受けたことだけが全てではなく、自然の豊かな環境に生まれ育ったことや幼い頃から動植物とふれあう機会が多かったことなどもひとつの要因かもしれません。しかし、やはり一番大きく私が影響を受けたのは、身近な生物準備室にいらした先生方(他教科も含む)との出会いであったと思います。それはその人の研究する姿勢であったり、生き方そのものであったり、何気なく発した一言であったりと様々です。また、教師だけでなく、当時偶然テレビで見たNHK市民大学「生命科学と人間」(1989年1月-3月期)の講師中村桂子さんとその講義の内容にも感銘を受け、研究職にはまだ珍しかった女性に憧れを抱いたのもひとつの要因であると思います。

これからしっかりした意志を持って生命科学を志そうとしている人はともかく、なんとなく生命科学方面に進みたいけれど理系教科の成績に自信がなくて迷っている人がいたら、成績だけで進路選択の幅を狭めることはありません。自分の可能性を自分で摘み取ってしまわないでほしいと思います。受験は進学するひとつの通過地点ではあるけれど、決してゴールではなく、別の見方をすれば、そこさえくぐれば大学という枠組みの中でできる限りのしたいことができます。枠組みが狭くなったと感じたら、他大学との単位互換制度などを利用したり留学したりという方法を使ってどんどん外の世界へとひろげてゆくことも可能です。

生命科学に進むならもちろん理系教科をしっかり押さえておくことも大切ですが、できなければできないなりに道は開かれているということをぜひ知っておいてほしいと思います。ですからやる前にあきらめないで下さい。たとえ動機が「なんとなく」でも、好奇心さえあるならば生命科学分野に一度関わってみられてはいかがでしょうか。生命科学系の実験を伴う研究はそれなりの予算と施設・設備を必要とし、周囲との円滑なコミュニケーション能力も要求されます。1人でいつでもどこでもできるような性質のものではありません。

そして、環境に恵まれた清心にいる間に豊かな語学力を身につけることをぜひともお勧めします。生命科学に限ったことではないと思いますが、語学力は必要で、どれだけあっても損はないものです。どんなにすばらしい研究の成果でも一人で持っていては全く価値がありません。論文、それもたくさんの人が読める英語論文にしていち早く発表してこそ意味があるのです。また、他の人が発表した英語論文も日本語論文と共に数多く読みこなしていかねばなりません。そのとき必要なのは語学力です。科学論文に難解な言い回しや回りくどい表現はほとんど出てきませんから、清心で普段の英語授業についていけるだけの力があればそう心配することはないと思います。英語だけでなく、日本語で自分の研究成果をシンプルに説明できる力も必要です。難しいことを難しい言葉でもって他人に説明するのは簡単です。難しいことをごく簡単な言葉でわかりやすく説明するのは意外と難しいことで、それができる人こそ研究者として尊敬に値するというのが私の個人的な考えです。

発表した論文はいついつまでも残ります。生命科学分野には一部を除いて地味な研究が多いのでなかなか日の目を見ることはないかもしれませんが、何かのきっかけでいつか誰かの役に立つかもしれません。後世にひっそり名前を残せる仕事というのも素敵だと思いませんか。生命科学の奥深さ・おもしろさを1人でも多くの皆さんに知ってほしい、もう少しリラックスして味わってほしいと思います。興味がある人はもとより、「なんとなく」おもしろそうだと思っているけれど今ひとつ自信のない人やよくわからないという人がいたら、そんな人にこそ思い切って飛び込んでほしいと思います。どういう進路を選ぶにせよ、どういう過程をたどるにせよ、歳を取って振り返った時に「これで良かった」と思えることが何よりの幸福です。今は目の前の受験勉強で希望と不安が混在しておられることでしょうが、焦らず長い目で見て頑張って下さい。

白髪 恵美
徳島大学 薬学部 薬学科 4年

白髪 恵美 徳島大学 薬学部 薬学科 4年

私は中学生の頃テレビで、薬物がその用量によって体に対してプラスに作用することもあれば、マイナスに作用することもあるということを知りました。そして、その原理などについてもっと詳しく学びたいと思い、薬学部に進学しようと決めました。実際に薬学部で薬が人体に作用する機構を分子のレベルで勉強して、その主作用、副作用が発現するメカニズムもわかってきて、薬学部に進学してよかったと思っています。 3年生まででほぼ全ての講義が終わり、4年生からは各研究室で卒業研究に取り組みます。研究室は有機系、生物系、物理系と、おおまかに3種類に分けることができます。私が所属している研究室は生物系の研究室で、リポソームという脂質二重膜を用いたドラッグデリバリーシステム(DDS)について研究しています。研究室ではそれぞれにテーマを与えられ、現在はそのテーマに必要な細胞培養の方法や動物の手術の仕方、リポソームの作り方などといった実験の基本操作を先生や先輩に教えてもらっています。また、論文を読んで基本的な知識を身につけています。このように、まだ基礎的な事しかできませんが、毎日楽しく実験をしています。

薬学部では有機化学を基礎として、生物や物理など幅広く勉強します。また、学生実習でも、動物を使った実験や、有機化合物を合成する実験など、いろいろなことをできます。興味のある方は、是非薬学の分野を勉強してみて下さい。

平山 文子

生物学を専攻したのは、高校で学んだ生物が面白かったのが一番の理由ですが それ以外にも、生物学はまだまだ新しい学問(遺伝子の二重らせんが解明されたのもそんなに昔ではないことや、これから伸びそうな分野であることなど)であることを知って、面白そうだと思ったからです。他にも、獣医学にも興味があり、結果的に獣医学部と理学部の両方に合格してしまったのですが、高知大学理学部生物学科(現在は、学科名等変更されているかと思います)に進学しました。いろんな分野の生物学を学べる大学であったのが志望理由です。一口に生物学といっても、分子生物学が中心の大学が多い中、高知大は植物から魚までとても範囲が広かったのです。そんな中で動物生理学を専攻。卒業論文は、なにか面白いことがしたいと思い、同じ県にあった高知医科大学の研究室にお願いし、そちらで実験、論文の作成をさせていただきました。

その後、神戸大学大学院に進みましたが、やりたいことと違っていると考え、退学。やはり医学部での研究が面白いと感じたために大阪大学医学部の研究室で実験助手として勉強しながらお仕事させていただきました。骨再生や、遺伝子治療の研究などで、とても面白かったです。大阪大学に4年と少しつとめていましたが、結婚するときに退職。現在は、専業主婦です。今でもお仕事しませんか?と研究室からお声をかけていただくのですが、子供が大きくなるまではお仕事はしないつもりです。ちなみに、夫も同業者です。子育てが一段落したら、また同じような仕事をしようと思っています。皆さんも、少しでも生命科学を面白そうだと思ったなら、ぜひ進んでみてください。理系というとなんだか固くて難しそうなイメージがあるかもしれませんが、実際はやる気のある人にはとても良い環境だと思います。

ただ、就職に関していえば、生命科学系の知識を生かした仕事はまだ少ないし、専門職はなかなか希望通りに選べないのも現実です。しかし、とても面白い分野ですよ。まだまだわからないことだらけです。大学は、自分で勉強しようと思えばいくらでも学べるところです。仮に、進んだ大学でやりたいことができなかったとしても、最近は、別の大学の研究室で共同研究をすることも多いです。面白そうな研究室があれば、研究室訪問してみればいいと思います。

平野 有紀
岡山市 保健師

平野 有紀 岡山市 保健師

平野有紀です。私は平成15年度から保健所の保健師として働いています。対人関係の仕事なので、これをすれば正解、というハッキリした結果が出ず、日々悪戦苦闘しています。
最近、久しぶりに学校を訪れて懐かしさを感じるとともに、現役高校生の若さを見て卒業して7年経ったことを実感しました。私の高校生活は勉強と部活でそれなりに充実していましたが、振り返ってみるとまだできることがあったかなと思います。たとえば、学校外での社会活動とか部活を通じて他校生と交流とかしてみたかった。そうしたらもっと充実したかな。みなさんもしっかり高校生活を充実させてね(ただし自分で責任がとれるようにね)。
では、後輩のみなさんに、少しだけ私の経験と考えていることをお伝えします。

保健師とは

私の仕事を簡単に説明します。保健師は、「受け持ち地区内の全住民を対象に、健康障害を予防し、健康を維持、さらに増進させること、そして最終的には、その地域全体の健康レベルの向上を目指した活動」をしています。
たとえば、1歳6ヶ月児や3歳児の健康診査では、成長・発達、疾病、親の育児負担などを確認して、必要な人へは治療や支援をすすめています。健診は親が子の成長を確認する節目でもあるので、どれだけ育っているかを一緒に確認しています。保健師も親と一緒に子の成長を喜ぶことが、親のパワーをさらに引き出すことにつながっていると感じています。育児の意欲も「健康」を構成する一要素なので、こういったことも健康づくりの保健師活動のひとつなのです。
保健師の活動は、生活習慣病、高齢者、精神障害、妊婦、感染症、健康づくりなど、健康に関することすべてが対象で、みなさんの健康づくりを応援しています。なんとなくイメージはつかめましたか?

高校からの道のりと今の悩み

実は私が保健師という職業を知ったのは、看護短大で勉強してからのことです。病気の治療・ケアではなくて、病気を予防する、病気を持ちながら生活をする人のための支援ができる職業があることを知って、「やってみたい」と思いました。高校生のときに祖父がガンで亡くなって、できる限り病気を予防したいという思いにつながったのだと思います。

看護短大からは、4年制大学保健学科の3年生に編入学して2年間学んで、保健師国家試験、公務員試験(就職試験)を受けて就職となりました。聞こえは順調ですが、実は編入の時には看護師で就職か編入するか迷いました。就職の時も看護師か保健師か選択に迷い、気づけば保健師の就職試験まで1ヶ月足らずで、なんとか試験準備が間に合った、という「人生の分かれ道」に何度か立っています。 看護短大入学にはトラブルや困難(センター試験での色々や受験行脚など)がありましたが、実家から通える看護短大(医療技術短期大学)に決めました。
なぜ大学受験で看護系を選んだかというと、

  1. 人の役に立つ職業がよい
  2. 自分のしたことの成果・反応が実感できるとやりがいを感じるだろう
  3. 手に職がついて、一人でも食べていける
  4. 生物系の授業が好きだった

からです。そんな理想と現実主義とのあいまいさをもとに選んだ学部でした。
「絶対に看護師になる!」の勢いでもなかったので、看護短大でも職場でも、生き生きと働いている人を見ると、「私と違って、この人は適職だなぁ」と思いヘコんでは、「私にはあっちが適職かも」と捨てた道に魅力を感じます。その時に自分の中で支えになっているのが、大学受験の時、大学編入の時、就職の時の「人生の分かれ道」で、自分が悩み考えた経験です。悩みぬいた末に選んだ道で、結果がでていないのに諦めたら悩んだ苦労が報われない気がするし、捨てた道を逃げ場にした感じで自分が納得できないしという思いと、同時にこの道で頑張ろうとしていた初心を思い出させて自分を元気づけてくれます。

後輩へ~高校生活を充実させよう!

就職して2年経ちました。辞めたいと思ったことも正直あります。こんな仕事だと想像してなかったと思うこともよくあります。でも続けているのは、この職業の一部分だけでも魅力を感じているからだと思います。
みなさんにも、時々でも仕事が楽しいと感じられるように、興味のある仕事に就いて欲しいと思います。高校生活は勉強のためだけではなくて、自分の興味を探すための期間だと思います。勉強は、目的:「自分のしたいこと」を実現させるために必要な生きる知恵の一つです。目的達成のために、「自分の好きなこと・続けてみたいこと」を勉強、部活、プライベートで考えてみましょう。これからのいろんな体験、人との出会いもプラスになると思います。そして3年生になったとき、きっと「自分のしたいこと」が見つかっているはずです。それでは、よい高校生活を!

片山 湖那
ノートルダム清心女子大学 人間生活学部 食品栄養学科 4年

片山 湖那 ノートルダム清心女子大学 人間生活学部 食品栄養学科 4年

私が将来の進路を決定しようとした際にまず考えたのは,日常生活から「食」と「栄養」に関わる勉強をしてみたいということでした。つまり、どのようにして人の生命維持に関わっており,どのように生体内で機能しているのかを知ることであり、食べ物により健康の保持増進と病気の回復に活用することができるかを勉強したいという思いがあって、現在在学している食品栄養学科に進学し、所期の目的を達することができました。

これからヒトの健康管理と臨床の場において栄養管理を行うためには、専門的知識や技術を有する管理栄養士が求められています。今後、新しい専門的知識と技術の習得に努め、健康管理とより高度の医療提供に向け、勉強していきたいと思っています。

私のゼミでは、卒業論文として「食物繊維の研究」を進めています。ご存じのように食物繊維は、ヒトの消化酵素では消化吸収されず、生体に利用されるエネルギーがほとんどないといわれていましたが、食物繊維の一部が大腸内で発酵分解し,利用されるエネルギーが存在することがわかり、各種食品中の食物繊維中のエネルギー量を測定しています。また食物繊維は、ヒトの健康の保持・増進、病気の予防に必要な物質です。具体的には食物繊維の摂取は、消化管機能を促進し、便秘の防止などの効果があることはすでに知られています。

以上、私の学生生活の一端を述べました。

在校生の皆さんへのメッセージは、

  1. 高校までに勉強したことが大学での基礎になりますので、しっかり予習・復習をしましょう。
  2. 日々の生活の中にみられるいろいろな現象について興味を持ちましょう。
  3. 社会の変化・情報を大切にしましょう。
  4. 自分で長所を伸ばす努力をしましょう。

など、卒業生の一人として希望しており、思いつくままに書いてみました。

木下 智香子
岡山大学 医学部 医学科 6年

木下 智香子 岡山大学 医学部 医学科 6年

具体的に医者になりたいと思うようになったのは中学生あたりでした。動機としてはいろいろありますが、清心での倫理の授業で学んだ、人のために尽くしたいという考えが根本にあると思います。どんな職種でも何らかの形で人の役に立つことにつながりますが、少しでも苦しんでいる人の助けになれたらと考え、医学部を選びました。人の命を扱うことは今更ながら大変なことだと感じますが、自分が持っている能力を最大限に使い、人の苦しみを少しでも和らげることができたらと思います。身体面だけでなく、患者さんの気持ちを汲み取り、精神面にも関わることのできる医者になりたいです。

私は今年の4月から6年生となり、最後の大学生活を迎えることになります。5年生から3週間ごとにいろんな科をまわり、指導医の先生のもとで実際の患者さんの診察を通して勉強しています。最初は患者さんと接することはとても不安でした。今でもどう接したらよいか悩むことも多いですが、患者さんのお話に耳を傾け、誠意を持って接することで、相手にもこちらの気持ちが伝わるものと思えるようになりました。現在、卒業後2年間研修医としてどの病院で実習するかを考えているところです。自分の持っている理想の医師像を目指して今後も頑張っていきたいです。

皆さんも、信じる道をあきらめずに将来に向かって可能性を高めてください。私も何回もくじけそうになりましたが、初心にかえり、何をしたいかを考え、あきらめずに頑張ることでここまでこれました。悩むことは人生の中で多々あります。その時に原点に立ち帰り、「何をしたい、こうなりたい」という1つの信念をしっかり持つことが大切です。信念を持って努力すれば、きっと夢はかなうと思います。与えられた環境の中で自分ができる最大限のことを見つけて、後悔をしないように毎日を大切に過ごしてほしいです。将来の夢に向かって頑張って下さい。

鈴木 麻友
香川大学 医学部 看護学科 3年

鈴木 麻友 香川大学 医学部 看護学科 3年

高校のとき、私はどちらかというと文系寄りの人間で、数学とかも情けないほどできなかったのを覚えています。それでも理系にいたのは、生命科学に関することを学ぶことにすごく惹かれていたからです。特に人体とか、生きているもののことをもっと知りたかったのです。生命が内包しているものは生物化学とかそういったものだけではなくて、もっと哲学的な、もっと大きなスケールの何かがあるような気がして、どんな職でもいいからこれを一生探し続けていけるような、学んでいけるような何かの職に就きたいと思っていました。自立できるようになりたかったから、何か職を得られるような学科で、なおかつ生命のことも学べて、できればヒトに近い場所で、ヒトのことをずっと学んでいけそうなところ――‐それが私にとって、看護学科だったわけです。

今は2年生も終わり、3年生になろうとしています。今まで極めて基礎的な疾病や医学に関する知識と、看護技術を学んで、最近では紙の上で想定した架空の患者さんの看護計画を、看護理論を用いたりして何人かのグループで考えるという、グループワークをしていました。架空だけれども、その紙上の患者さんはどういう人で、今一番何に困っていて、何が問題で、私たち看護者はその人のためにどんな最善のことができるのだろうということを必死になってみんなで考えています。やがて3年生になれば病棟実習もはじまるだろうし、この作業をそれぞれ皆がすることになります。実を言うと最初は「すべては患者さんのために」的な考え方に抵抗を持っていましたが、より視点をそこまで落とし込ませてその人を見てみると、まるで自分の親しい人や家族のことを考えているような気持ちになってきて(本当はここまでなってはいけないのかもしれませんが)、見も知らない人のことをこんなに考えられる自分がいることに最近は驚いています。一週間だけだった病棟実習では、自分でも驚くくらい担当患者さんのことを考えている自分がいました。人のことを知りたいけど、人と関わるのは苦手だと思っていたのに、実はそうでもないことを、この学科に来てから初めて気づきました。

もし今自分が興味のあることがあって、でもその方面には少し苦手なものがあったとしても、それだけで可能性を切り捨てずに思い切ってその世界に足を踏み込んでみると案外やっていけるものだと思います。確かに、すべてが上手くいくわけではなくて、たとえ自分が得意としている分野でもつまずくことなんて幾つも出てくると思います。まして就職するとなれば、特に。でもそれでもその道を続けていけるのは、その進路や分野にかける興味や好きな気持ちやこだわりや信念、情熱なのだと思っています。ちょっとした興味からその世界に入っていって、学んでいくうちに離れられなくなるのもアリだと思います。自分がずっと続けていける何かを、自分と相談しながら吟味し続けていって、まだ知らない自分を見つけながら、これからの皆さんが納得した人生を送ることが出来ればいいな、と願っています。

矢庭 美幸

矢庭 美幸

私が現在の進路を選んだのは、心の中でずっと"人の役に立ちたい"と思っていたからです。人の役に立つ仕事って何だろう…?と考えました。人の役に立てる仕事を調べてみると色々とありました。探した中でも、人間の身体のつくりに興味があり、医療系という職種への道を選びました。医療系の中でも、人と関わることが好きで、"白衣の天使"に憧れていたことから、現在の看護師という道を目指しました。

看護学校での3年間は、早いものでした。病院での実習や学校での授業もひと段落して、現在は看護師国家試験に向けて勉強しています。

最後に、生命科学分野への進学を考えておられる生徒さんに…

私は、理数系といえば、数学・物理・化学を勉強するものだ!と思い、数学はIII・Cまで、1年生で生物をかじったから2年生からは物理をしてみようという安易な考えから選択科目を選択しました。そのためか、私の在学中の成績は悲惨なものでした。物理ではなく、生物を選択していたらまだ良かったのかなぁ、数学もII・Bまでにしていたら良かったかもしれない…と思うこともありました。しかし、看護学校に入ってから、分からない中でも授業を受けていたことで、看護学校での授業をとても理解しやすいことが多かったです。

高校在学中に先生が、「今は分からなくても、この先に学んでいくことで分かるから。それまで、温めておけ!」と、言われていました。この言葉の意味が、看護学校に入学してから分かりました。その時に、学校の先生が言われていたことには意味があるのだと知りました。今思えば、学校の先生が言われることを参考にもっと頑張って勉強していれば、もっと世界が広がっていたかもしれないと思うと残念でなりません。皆さんは、私のように後悔しないように、色々なことに興味を持って取り組み、世界を広げていってください。

小椋 茜
朝日大学歯学部歯学科

私は元々医学部志望でした。医療関係の中で医学以外の薬学などではなく歯学を選んだかというと、私は人と直接関わりを持ち治療をしたいと思っていたからです。

歯学といえば口腔内のみという印象を持ち、医学とはまったく別のものだと考えられがちです。しかし2学年を終了し、そうではなくむしろ深く関連しているのだとわかりました。微生物学を勉強した際、口腔内の微生物の数は排泄物に含まれる数とほぼ同じと聞いたときは衝撃的でした。また口腔内に存在する菌が心内膜炎などの疾患に関わることを知り別物として考えていたことを改めました。咬合について学んだとき、髪の毛1本を噛んでもわかるように噛むということの影響力の大きさを感じ、それが全身の体のゆがみの原因であること、全身疾患の原因のひとつになることがわかりました。スポーツ選手にとって、咬合力と力の関係は大きく関わり、ソプラノ歌手にとっては、歯並びが音声と深く関わります。このように歯科とは細かいことを行う技術士のような存在でもあります。

歯科は口腔という消化器官の入り口として大切な働きをするところです。小さな場所ですが生きていくために欠かせない器官だと思います。主な仕事としては、削るなど技術的なことがほとんどですが自分自身の努力が実を結ぶ仕事です。患者さん1人1人に合わせて進めていくのでコミュニケーションも大切です。歯科医師が多くなりさまざまな面で厳しくなってきています。しかし、とてもやりがいのある仕事なので興味があればぜひ進んでください。

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