ルソン島パンガシナン州を流れるアグノ川(Agno River)の上流に建設された、アジア最大級のロックフィルダム「サンロケ多目的ダム」を訪問しました。このプロジェクトは、単なるエネルギー開発や治水にとどまらず、「徹底した環境配慮」を基盤に進められてきた先進的な多目的ダムのモデルです。生徒たちは、現地の巨大なインフラ施設を間近に見学しながら、持続可能な社会づくりに向けたアプローチについて深く学びました。
1. サンロケダムの4つの主要な役割(多目的ダムの解説)
現地スタッフの方からのレクチャーを受け、ダムの構造や多目的プロジェクトの全容について解説していただきました。サンロケダムには主に4つの重要な役割があります。
① 洪水調節(治水)
台風の通り道であるフィリピンにおいて、下流の平野部を壊滅的な洪水被害から守る防波堤の役割を果たしています。
② クリーンエネルギーの創出(発電)
最大345メガワットの電力を生み出す水力発電所が併設されており、化石燃料に頼らない再生可能エネルギーを首都マニラを含むルソン島全域へ供給しています。
③ 大規模な農業灌漑】
ダムによって安定した水利用が可能になり、下流に広がる約70,000ヘクタールもの広大な水田や農地に通年で水を送り、地域の食糧生産を支えています。
④ 水質の改善・浄化
上流の鉱山地域などから流出してくる有害な堆積物(シルト)をダム湖で適切にトラップ(沈殿)させ、下流へ安全で綺麗な水を流す工夫がなされています。
2. 生徒が見た、徹底された「環境問題への配慮」
施設見学の中で特に印象的だったのは、開発に伴う環境負荷を最小限に抑え、地域の自然と共生するために多額の投資と技術が投入されている点です。
水質管理のセンシング技術
下流の生態系を守るため、放流する水の温度や溶存酸素量、濁度などをリアルタイムでモニタリングする高度な管理体制を見学しました。
大規模な植林プロジェクト(水源林の保全)
ダムの寿命を縮める「土砂の流入」を防ぐため、ダムの周囲や上流エリアでは大規模な植林が官民一体で進められています。森を守ることが、結果としてダムの機能を維持し、生物多様性を守ることにつながるという「森林と水」の強い連動性を学びました。
大型インフラの開発は、かつては環境破壊と表裏一体に語られることが多くありました。しかし、今回のサンロケダムで目にしたのは、「科学技術(工学)によって環境問題を解決し、同時に人々の暮らしを豊かにする」という試みです。














