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清心女子高校SSH希望調書:研究開発課題

2005年12月24日

「生命科学コース」の導入から出発する女性の科学技術分野での活躍を支援できる女子校での教育モデルの構築

●現状の分析と研究の仮説
○科学技術分野における女性の現状と社会の意識改革の必要性 
 本校は中学校(女子校)を併設し、姉妹校として女子大学・大学院・大学附属幼稚園・大学附属小学校をもつ、120年の歴史がある女子校であるが、女性を取り巻く社会状況の変化に対応して、その社会的役割を再点検する必要に迫られている。それは、性別役割分業の影響下で、社会全体が女性の社会参加に消極的であったという歴史を反映している。特に、国際社会において、日本では科学技術分野での女性の活躍が極めて少ないことは、重要な社会的問題である。今、学校教育で、女性の理系科目への前向きな気持ちを育て、社会貢献できる科学技術者を養成できるプログラムの開発が期待されている。
 2005年11月28日の第50回総合科学技術会議で検討された「科学技術に関する基本政策について」に対する答申(案)では、「人材の育成、確保、活躍の促進」における「多様で優れた研究者の活躍の促進」として「女性研究者の活躍促進」が取り上げられている。また、「理数好きの子どもの裾野を広げる取組の中で、女子の興味・関心の喚起・向上にも資する取組を強化する」ことが求められるとともに、「女性が科学技術分野に進む上での参考となる身近な事例やロールモデル等の情報提供を推進する」ことが指摘されている。
 近年、確かに女子の大学生や大学院生・ポスドクの比率はかなり高いものになってきている。例えば、分子生物学会のポスター会場では、半分以上が女性の発表ということもあるようになってきた。しかしながら、研究者として自立している(自分で研究費を獲得して研究室を維持している)女性の数となると激減する。世界的に先進国でもフランスを除き、とても男女半々という数には達していないのが現状である。理系をめざす女子生徒が増えるためには、学問への興味刺激だけでなく、女性科学技術者を取り巻く現状の打破も大きな課題となる。独立した地位が与えられるチャンスがあるなら、研究者をめざす女性が増えても何ら不思議ではない。そのような状況へ移行するためには、社会の意識改革が必要であるとともに、過渡期において活躍する女性の登場が必要である。
 また、女子生徒への薬学部への急激な進学は、女子の理系進学のきっかけになっているが、この現象は、「医薬分業」の推進、薬剤師需給の地域格差などを背景にしたものである。しかしながら、それを薬学部に起こったブームとして捉えるのではなく、女性が他の科学技術分野にも進出していけるような時代と認識していかなければならない。そのように考えると、現代の女子校の社会的な役割が女性の将来の可能性を拡げていくことにあるなら、理系への進学を支援する教育課程が必要である。

○女子の理系進学を支援する教育プログラムの実施による社会の意識改革の推進
 伝統のある私立女子校という旧来の意識の呪縛から逃れにくい学校が、先進的に女子生徒が理系をめざすことを支援することは、社会の意識を変えるきっかけとして重要であると考えられる。女子校の特徴として、学校行事、生徒会活動や実験・実習、宿泊研修などの生徒の活動すべてにおいて女子生徒がリーダーシップをとらざるを得ない状況がある。そのことを逆に言えば、女性のリーダーシップを養成するのに適した環境であるともいえるのである。
 本校では、先にあげた社会状況の趨勢を踏まえて、平成18年度から、普通科の中に「生命科学コース」「文理コース(2年次に文理を選択)」の2コースを設定する。理系への進学を前向きに支援する体制を充実させ、理数系教育をさらに推進していくという方針である。コースごとに教育課程を編成し、それぞれのコースの特性に合わせた教育活動を展開することによって、教育活動全体の中で、理系分野への進路選択を前向きに選ぶことができる女性を育てることができると考えられる。そして、女子の科学技術分野に対する興味・関心の喚起・向上にも資することができると考えられる。さらに、本校の卒業生を含めた女性研究者を理数系の授業や進路選択支援の教育活動に積極的に活用することにより、女性が科学技術分野に進む上で参考になるロールモデルの情報提供を推進できる。
 また、このような女子の理系進学を支援する教育プログラムを実施することで、女子の理系選択に対する教員・保護者の理解、ひいては社会の意識改革が進むことに貢献できると考えられる。

○女性の積極的に学ぶ姿勢とリーダーシップを育てる教材と指導法の開発
 従来考えられてきた男女の性格の特徴に、(1)男の積極的攻撃性と女の消極的防御性、(2)男の自立性・支配性と女の依存性・融合的同調性、(3)男の現状打破性と女の現状維持性などがあげられている。このような見方がステレオタイプ化されて、男であれば「男らしさ」、女であれば「女らしさ」として社会的に期待されてきた。しかしながら、現在では、その考え方が男女差別につながっていると考えられている。単なる性別による「区別」であり、不当ではないという意見もあるかもしれないが、男らしさに振り分けられた「積極性がある」「決断力がある」「さばさばしている」などがリーダー的資質なのに対して、女らしさに振り分けられた「消極的である」「よく気が付く」「優しい」は補助的な立場の人に求められる資質であることを考えると偶然ではないことが理解できる。
 能力の特性については「女は言語能力に優れており、男性は視覚・空間認識・数学的能力に優れている」とよくいわれるが、それが生物的背景に基づくかどうか検証するのはかなり難しい。性役割を強化している社会的な影響も考えられるからである。高校で進路を考えるときに「女なのに理系なの」と言われるように、無意識的に女性には「理系に行かないように」という抑圧がかかっている場合は多い。社会的な抑圧を取り除く努力なしに、女性の科学・技術分野での活躍を推進できない。
 理科好きにも拘わらず理系への進学をためらいがちな女子生徒に、積極的に理系の進路を選べる教育が必要である。理系分野で活躍する科学技術者の講演に積極的に女性を起用することや、実験や野外実習の指導者に、女性の研究者、大学生や大学院生を選ぶことによって、ロールモデルを提示し、身近な存在として認識させることによって、研究者として自立している女性科学技術者を育成していく効果を期待できると考えた。

  • 投稿者 akiyama : 11:29

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