• ぼうぼうどりの生物教室
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同僚の先生が庭で採取したバナナ状の卵嚢一対を生物教室に持ち込んだのは,1989年3月のことだった。図鑑で調べた結果この卵嚢は、カスミサンショウウオ(2019年にセトウチサンショウウオとして記載)のものであるということが判明した。孵化後、無事に成長し、2年後には約10cm 程度に成長し、生物教室の水槽の中で産卵した。この水槽の中の様子に生徒も興味を持ち始めた。そこで、様々な有尾類を飼育しながら、発生過程や野外での生態を、学生と共に30年以上観察してきた。
今回は、おもにアカハライモリの調査を例に生態的調査の勘どころや、その背景の分析の様子を紹介して、参考に供したい。

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両生類は環境の変化に弱い。その理由は、水辺と陸地との間を行き来して生活しているので両方の生息域が必要であり、その生存が両方の環境変化に影響されるということである。皮膚が薄く、湿度や気温に敏感で、有害物質が侵入しやすいし、卵は殻に覆われていないので、乾燥や凍結、水質汚染の影響を受けやすい。両生類は地球温暖化の最初の犠牲者になると危惧され、"環境のカナリヤ"と呼ばれることがある。
生息数の減少の原因は、生息地の改変や分断化・環境汚染・乱獲・外来種の侵入・気候変動・紫外線の増加・伝染病などがあげられている。2010年のIUCN の集計では、両生類では3分の1の種が絶滅の危機にあるとされている。特に有尾類では、ほとんどの種が希少種になっている。
まず昔と違う環境に着目して、身近なところから見て回ることを続けていくと、生徒自身が気が付くことが出てくる。たとえば、道路や水田に設置されたコンクリート路側溝への転落死が両生類減少の一因となっている(下図)。U側溝は設置に大幅なコストダウンでき、かつ、素掘り側溝と比べて水の浸透による損失が少ないことから、効率的な排水が可能になるので、山地や水田に多く導入されている。しかしながら、このU字側溝によって、落ちた場合に脱出が不可能になって捕殺されたり、生息環境が分断され、行動範囲が制限されたり、水質の悪化を招くなど、生態系に悪影響を与えている。

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  • 投稿者 akiyama : 16:39
イモリ属の北限に生きるアカハライモリの繁殖戦略
アカハライモリは、これまで春から初夏に掛けての2-3ヶ月が繁殖期であると考えられてきた。ところが、秋にも、野外でたびたびイモリの交配行動を観察し、雄の婚姻食もが現れることも確認した。これまでの記録をみると、1931年には筒井が、1961年には岩澤が同様にイモリの交配行動を秋に観察しており、岩澤と石井(1990)は精巣の重量が9月~10月に最大になること、アンドロゲンの分泌が春と秋の2度、ピークに達…続きを見る
アカハライモリを教材として利用 ⑦まとめ
発生教材として、カエルの仲間がよく用いられるが、受精率と胚の観察のしやすさでは、イモリの方が優れていると考えられる。ヒトなどの哺乳類の初期発生は体内で進み、ニワトリなどの鳥類の発生は輸卵管と卵殻中で行われるのでたやすく観察できない。それに対して、イモリなどの両生類は、受精から孵化までの過程が、透明なゼリー中で進むので、初期発生からすべての段階を観察できる。受精卵の縛り方によって双頭の幼生や別々に分…続きを見る
アカハライモリを使った発生の観察 ⑥生徒へのアンケート
 生徒の自己評価をみると、「卵割からいろいろな器官に分化する過程が理解できた」、「発生の仕組みに興味をもった」がともに86%であり、学習の動機づけにはなったようだ。一方、技術的には、「実体顕微鏡の操作が身についた」が81%、卵の結紮は、「うまく縛れた」が62%と少なかった。しかしながら、生徒の感想に「今まで映像で見てきたイモリの胚を実際に見て,映像や写真通りに卵割の形が見られて,とても面白かった」…続きを見る
アカハライモリを教材として利用 ⑤授業の展開
授業は、①アカハライモリの特徴及び生態の理解(ビデオ教材を利用)、②初期胚の観察及びスケッチ、③各発生過程の理解(ビデオ教材を利用)、④胚の結紮実験の順に進めた。 ①については、雌雄の区別、春の繁殖期と冬の越冬期の野外での様子と繁殖行動を紹介した。積雪下の水田側溝で多数のイモリが群れているシーンや、配偶行動(配偶行動の後,雌が雄の産み落とした精包を貯精嚢に取り込む)を見て、貯精の仕組みや受精のさせ…続きを見る
アカハライモリを使った発生の観察 ④実験の準備
 産卵は、前述のゴナトロピン注射による産卵誘発でおこなった。繁殖期のイモリは貯精嚢(総排出腔付近の各細管)に精子を保持(貯精後6カ月以上受精可能)し、産卵時に体内で受精させる仕組みになっている。産卵時を発生のスタート(受精時)と考えて観察することができる。したがって、生徒に初期胚を観察させるには、第一卵割までに要する時間をさかのぼった時刻に産卵するように注射をしておけばよい。  注射したイモリを入…続きを見る
アカハライモリを教材として利用 ③アカハライモリを使った初期発生の観察
教材はアカハライモリを用いた。アカハライモリは、北海道・沖縄を除く広い範囲に分布し、比較的容易に入手できる代表的な有尾類の種である。「イモリ」という名は、「井守」と書くが、「井」が「井戸」や「水田」を表すことから、「井戸を守る」「水田を守る」を意味するといわれるように、池や水田側溝、小川のゆるやかな流れ、山地の湿地などに生息している。 体外受精で、透明なゼリーの中で孵化まで成長するので、各器官が形…続きを見る
アカハライモリを教材として利用 ②生物の発生過程を学ぶことが大切
小学校の実践で「一つの選ばれた精子が卵子(生物学では卵)と受精できる」という擬人的な表現をして、生命の尊厳を教える指導がよくなされている。実際、前述の中学校の教科書の「たった1つの精子だけが」という記載に、「選ばれた精子」というイメージを付随していることを感じる。私はまず、生命現象をきちんと科学的に理解させることが理科では重要だと考えている。高校では、生物の発生(受精卵から成体になる過程)の教材と…続きを見る
アカハライモリを教材として利用 ①はじめに
高校1年生の生物で「生殖と発生」を教える中で、「ヒトの受精はどこで起こるか」と生徒に質問したら、正解したのは29%だった。女性である生徒にとって自分の身体のことでもあるので、知っているだろうと期待していたが、そうではなかった。正解した生徒に情報源を聞くと、中学校の保健体育という答えが返ってきた。さっそく、中学校の保健体育の教科書を借りて調べてみると、「膣内に一度に射精される精子の量は、ふつう2~4…続きを見る
岡山県北部でアカハライモリ調査
もう20年以上アハハらイモリの調査に通っている岡山県北部の水田に出かけた。今回は、1年半前に退職した清心女子高校生命科学コースでアカハライモリのクローン作製目指しているグループの生徒が同行した。実験材料として使っているアカハライモリが自然の中でどのように生きているのか観察してもらうためだ。この季節の県北は新緑に包まれていて、それを眺めながらの調査は気持ちがいい。 …続きを見る
宮崎県でアカハライモリ探し
宮崎県の公立高校の先生方にSSH事業と課題研究の進め方について話させていただく機会をいただいたので、そのついで、先生方と宮崎県のアカハライモリの調査で出かけた。一日しか調査できなかったが、先生方に協力していただいて、この時期でもイモリを採取できる生息地を3箇所みつけることができた。 …続きを見る
岡山県北部でイモリ探し
連休は草刈りの作業でつぶれて、やっと県北にイモリを観察するために向かった。県南では木々は青々としているが、県北の森は5月中旬でも新緑であった。水田には苗が植えてあったが、イモリの姿は発見できず、湧水が流れ込みがある場所でやっと捕獲することができた。 …続きを見る
県北の積雪前にイモリの調査
寒波が来て、明後日は県北では積雪という天気予報で、イモリの調査に出かけました。イモリの姿はほとんど見られませんでしたが、なんとか雄5匹、雌5匹を採取できました。 …続きを見る

ICB2015 Poster Session

2015年11月17日

ICB2015 Poster Session
ポスター発表には、3題(カメ、イモリ、森林)を申し込んだ。一人の研究というより、これまで継続して長い期間をかけて取り組んできた成果をまとめての発表ということになる。生物多様性に関連したテーマを設定した。 …続きを見る
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数研出版サイエンスネット54号に「授業における有尾類の活用」というタイトルで、アカハライモリを使った教育実践の紹介をさせていただきました。 http://www.chart.co.jp/subject/rika/scnet/54/Snet54-column.pdf …続きを見る
日本動物学会第86回新潟大会高校生によるポスター発表
新潟の朱鷺メッセで、日本動物学会第86回新潟大会が開催され、高校生によるポスター発表に行ってきました。伊丹から新潟への空の便で行くのは初めてで、新潟を上空から、収穫前の稲が育っている水田が整然と並んでいる光景が印象的でした。本校からは2年生が1件参加させていただきました。コンペのような競争するスタイルだと、審査の人から厳しいコメントをもらうことが多いのですが、本学会では、多くの研究者からアドバイス…続きを見る
学校周辺の水田も田植えが終わった
アカハライモリの調査で、大分県の南部に行ったとき5月9日には田植えが終わってイモリが水田を徘徊していた。同じ大分県でも日田市は6月13日に行ったときに田植えの最中であった。学校周辺でもほぼ田植えが終わったようだ。二子の丘からの眺めも梅雨時期の水田の姿になった。 …続きを見る
日田市でイモリの調査
日田市の山間部でアカハライモリの生息状況を調べた。休耕になっている水田もあったが、昔ながらの水田も見ることができ、2カ所でアカハライモリを確認できた。水田に水をはられてから間もない状況であったが、イモリの産卵行動(写真は雌雄の配偶行動)を観察することができた。赤い腹を上に向けているので死んでいるのかと思ったら産卵中だった。カメラを近づけると急いで逃げて行ってしまった。その近くの雑草を拾い上げてみる…続きを見る
愛媛県でアカハライモリ探し
瀬戸大橋を渡って、愛媛県に一人でアカハライモリを探しに行きました。山間部の水田でなんとか見つけることができました。 …続きを見る
新年度、「生命科学課題研究」が始動
SSH指定10年目の2015年度が始まった。毎週、木曜日の午後は「生命科学課題研究」の授業が2コマ組まれている。アカハライモリの雌雄を分ける作業、ブログの更新のための写真撮影、サンショウウオの幼生の世話等それぞれの役割をこなしている。本格的に実験するのは5月の連休明けで、そこから中間テストをはさんで6月末までが1学期の研究期間になる。 …続きを見る
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