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雪花が散る林でオオイタサンショウウオの産卵を観察

2021年11月 9日

 2009年1月24日、九州はその年一番の寒波。大分県国東市での野外調査。午前10時、山際を散策していると林の中に水田跡の湿地があった。残雪の静かな林の中で、溜りの水面が波打っているのが見えた。近寄るとオオイタサンショウウオが群がって産卵をしている最中であった。これまで両生類は雨が降って、気温が上がったときに産卵する(洲脇,1978)と考えられていたので、サンショウウオの仲間が雪花舞う日中に産卵行動をするとはまったく想像していなかった。この日の気温は0℃。産卵後に水温を測ると3℃、水底の泥の中でも5℃であった。オオイタサンショウウオは、低温であっても、日中であっても、繁殖行動を抑えられず、産卵するということを、野外観察から学ぶことができた。

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有尾類の研究に取り組んだきっかけ
 有尾類を研究するきっかけは、清心女子高等学校に勤務してちょうど6年の1989年3月、同僚の体育の先生が自宅の畑の角にある溜りで採取した正体不明の一対の卵嚢が何であるかと生物教室に持ち込んだことがきっかけである。孵化した幼生は、カエルの幼生と異なり、外鰓を持っていた。これがカスミサンショウウオ(現在のセトウチサンショウオ)だった。
継続して飼育して、2年後初めて産卵を観察した(秋山,1992)。そのことが話題となり、地元の新聞に「カスミサンショウウオ・自然保護の生きた教材に・人工繁殖にも成功」(山陽新聞,1992年5月25日)という題で紹介され、それがきっかけになって、サンショウウオについての問い合わせが多くなり、私自身がサンショウウオについて詳しくならざるを得ない状況になり、有尾類(イモリとサンショウウオ)の仲間を継続飼育するようになった。清心女子高校の生物教室はサンショウウオやイモリの飼育ケースでいっぱいになり、"有尾類に特化した動物園"に変容していた。大学に異動した今も、地元の高校生物部の生徒と一緒にオオイタサンショウウオを飼育している。

有尾類の調査・研究で見えてきたこと
 有尾類の卵は卵嚢のゼリーに包まれて発生し、幼生期は水中生活するので、水質の影響を受けやすい。成体になっても皮膚には毛も羽毛も鱗も無く、水質や大気の影響を直接受ける。それゆえに、外部環境の変化の影響を受けやすい生物なのである。
 野外で観察していて気づいたことは、①山際や水田に設置されているコンクリートU字溝が「死のトラップ」になっていること、そして、②そのU字溝が自然の自浄作用を奪い、水底をヘドロ化し、水を腐敗させていること、③産卵場所が人里離れているので、ゴミの不法投棄の場所になりやすいとこ、④繁殖期の移動の際にロードキルが起こっていること、⑤ペットとして乱獲されていること、⑤アメリカザリガニなどの外来生物によって捕食されていることである。
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 私自身は、有尾類の繁殖についての知見を得るために、卵からの完全飼育下での繁殖方法の確立を目指した。そして、オオイタサンショウウオでは、人工授精や水槽での配偶行動誘発による産卵に成功した(秋山,2020a)。
 また、アカハライモリでは、生態調査では、本来の繁殖期でない秋の配偶行動を観察したことをきっかけに、11月に貯精嚢中に精子が存在することと受精卵を産卵できることを確認できたことから、アカハライモリの繁殖期は、従来の定説である"春に始まって初夏に終わる"のではなく、"秋から初夏までの長期間にわたる"という繁殖戦略についての新しいい知見を得ることができた(Akiyama et al., 秋山,2020b)。
 有尾類の保護については、生息数の減少を引き起こした原因が解明され、解決がない限り、生息数の減少に歯止めがかからない。また、飼育された個体を自然に帰すこと自体の問題も考慮しなければならない。
 30年間、有尾類と向き合うことでいろいろなことを考えさせられた。毎日の餌やりで生き物と対話した生徒が、生き物への愛情を育み、小さな命の大切さを学んでくれたと信じている。

【文献】
〇秋山繁治:1992.孵化後実験室内で飼育し産卵したカスミサンショウウオ.両生爬虫類研究会誌,41:1-5.
〇秋山繁治:2020a.卵から完全飼育下でオオイタサンショウウオの繁殖に成功.九州両生爬虫類研究会誌,11:62-63.
〇秋山繁治:2020b.イモリ属の北限に生きるアカハライモリの繁殖戦略(秋から春をまたぐ多重交配の謎を解く).生物の科学遺伝別冊 24:340-349
〇Akiyama.S, Iwao.Y., Miura.I. Evidence for True Fall-mating in Japanese Newts Cynops Pyrrhogaster.Zoological Science 28:758-763(2011)
〇山陽新聞.カスミサンショウウオ・自然保護の生きた教材に・人工繁殖にも成功.1992年5月25日朝刊.
〇洲脇清:1978.カスミサンショウウオの産卵習性.岡山県高等学校教育研究理科部会誌28:31-36.

  • 投稿者 akiyama : 14:34

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