岡山県で発生した最大の山火事は、2025年3月23日に岡山市南区飽浦(あくら)地区で発生し、同年4月11日に鎮火が宣言されました。この火災は、岡山県内で記録に残る中で最大規模となる約565ヘクタールの山林を焼失しました。復旧作業を進めるため、多くの場所が立ち入り禁止となっています。
この山火事による生態系への影響が懸念されているため、立ち入り禁止区域外にあるセトウチサンショウウオの生息地において、3月に産卵が行われ、幼生が育っているかどうかを確認しました。
小型サンショウウオの仲間は、基本的に地中で生活しており、産卵期の2月から3月に繁殖地の水たまりに姿を現して産卵します。今回の山火事はちょうど繁殖期にあたるため、影響が懸念されていました。今回は1か所の水たまりしか調査できませんでしたが、69匹の幼生が生存していることが確認できました。
セトウチサンショウウオは、産卵期の3月にまず雄が入水して雌を待ちます。水辺を訪れた雌は雄と配偶行動をとり、水中で産卵します。卵嚢からは約1か月後に幼生が孵化し、鰓をもった状態で水中生活を始めます。幼生は成長して四肢を持ち、5月下旬から6月にかけて変態し、鰓を失って上陸します。
このように、生存確認が可能な期間はごく短いのが特徴です。繁殖期に水辺を訪れた成体を確認するか、幼生を捕獲して確認するしか方法がありません。
今回の観察では、幼生が上陸間近の状態だったため、生存確認の可能な期間は6月までと考えられます。もし今回調査を行わなかった場合、次に生存を確認できるのは、翌年の3月まで待たなければならなかったでしょう。