• ぼうぼうどりの生物教室
  • ぼうぼうどりの生物教室
  • ぼうぼうどりの生物教室
  • ぼうぼうどりの生物教室
  • ぼうぼうどりの生物教室
  • ぼうぼうどりの生物教室
  • ぼうぼうどりの生物教室
  • ぼうぼうどりの生物教室

論文「科学課題研究」を中心に据えた女子の理系進学支援教育プログラムの開発(15)科学教育への思い

2018年3月17日

PA222240.JPG

科学教育への思い
 私自身は、大学卒業時に研究を志すものの、経済的な理由で大学院進学をあきらめ、高等学校の教員として就職した。40歳過ぎた頃休職して修士課程は修了したものの学位の取得は断念していた。そんな時、大学の先生から「研究できる環境がないなら、高校に研究できる環境をつくればいい」と紹介されたのがSSHだった。 SSHは、生徒の科学研究だけでなく、教師である私にも科学研究の機会を与えてくれたのだ。そして、 SSH採択によって放課後コツコツと科学研究に取り組む行為が、職場(教育現場)で市民権を得ることができたことは、私にとって大きな救いだった。教育現場では学習指導と生徒指導が中心、部活動でも体育系が中心で、物理・化学・生物等、いわゆる理科(科学)系の部は細々と存続していればいい方という状況だったからである。しかしSSHに取り組んで3年目の2008年に広島大学大学院理学研究科生物科学専攻に入学し、生徒の課題研究の指導の傍ら自分自身の研究を進め、 3年後の2011年に博士(理学)を取得することができた。在職したままでの学位取得の過程での苦労は、論文作成指導だけでなく生徒への指導にいろいろな面で生かされていると実感している。
 「生命科学コース」の開設から始めた今回の教育プログラム開発については、 「数理科学課題研究」や「物質科学課題研究」を設定する前の段階では、 SSH採択時のヒアリングでも女子の理系進学支援が必要なのは「数学・物理・化学」分野であって「生物」分野ではないのではないかという疑問を投げかけられることが多かった。そんな中、私は「生命科学コース」の開設から始めたのである。その理由は次の3つである。①今から10年前は薬学部の新設などがあり、医学系・生物系を中心に女子の理系進学が激増した時期であったので、この機会をとらえて女子の理系進学機運を高めたかった。②科学技術者といえど生命科学に関連する「生命尊重」、「自然保護」などの社会的な問題についての理解が必要だと考えた。③生物(生命科学)分野は、高校生でも研究テーマを見つけやすいので科学の入り口になる。本校のSSH運営指導委員の元日本物理学会会長の坂東昌子先生が、本校の生徒の発表を聞いて「物理・化学に比べて生物は多様で未知なことが多いので、高校生にはやりがいがあるだろう。意欲的に新しいことに取り組んでいるのに感心した」との意見を述べられた。そして私の身近には、高校で生物部所属だったのに今では物理教師になっていたり、息子が高校では物理部所属だが生命科学専攻で博士課程に進学していたり、私自身も化学から生物科学に大学院で大きく研究テーマを変えているという状況がある。研究分野は、その人の心の底にどんなものに好奇心を持つかで決まってくると考えている。理科は「数学」「物理」「化学」「生物」に向かって基礎から応用へと複雑化していくが、縦割りに区別される「分野」ではなく、相互に関連し合いながら自然をひも解くためのツールになるものだと理解している。
 学問や研究には範囲などというものもない。むしろ既存の範囲から逸脱するところから生まれる。学校でまじめに勉強をすれば不可避的に生ずる疑問や興味は、追求していくと教科書の範囲から逸脱することは避けられない。しかしながら、大学受験を意識した高校生は胸に抱えた疑問や興味を押し殺して、一定の範囲内の知識だけを完全に覚えることを要求されることになる。十代の最も頭の柔軟な時に、重箱の隅をつつくようなことをしなければならないのはつらいことである。だからといって「勉強なんてつまらない」と学問から離れていくのはあまりにももったいない。高校を卒業していく生徒たちに、生命科学コースで体験した"知的な感動"を大切にして、前向きに学び続けて欲しいと思う。

  • 投稿者 admin : 16:43

最近の記事

no image
2018年8月13日から24日の日程で、UTHM(マレーシア・ツンフセインオン大学)のINTERNATIONAL SUMMER SCHOOL PROGRAMMEにノートルダム清心学園清心女子高等学校の生徒を引率して参加している。 マレーシアでの環境学習の実施は、文科省SSH事業に採択された2006年度からで13年目になる。最初は、ボルネオ島のサバ州で地元のサバ大学の協力で出発したが、現在はジョホー…続きを見る
論文「科学課題研究」を中心に据えた女子の理系進学支援教育プログラムの開発(15)科学教育への思い
科学教育への思い  私自身は、大学卒業時に研究を志すものの、経済的な理由で大学院進学をあきらめ、高等学校の教員として就職した。40歳過ぎた頃休職して修士課程は修了したものの学位の取得は断念していた。そんな時、大学の先生から「研究できる環境がないなら、高校に研究できる環境をつくればいい」と紹介されたのがSSHだった。 SSHは、生徒の科学研究だけでなく、教師である私にも科学研究の機会を与えてくれた…続きを見る
論文「科学課題研究」を中心に据えた女子の理系進学支援教育プログラムの開発(14)グローバルな視点で理科教育を考える。
グローバルな視点で理科教育を考える  「なぜ銃を与えることはとても簡単なのに、本を与えることはとても難しいのでしょうか。なぜ戦車をつくることはとても簡単で、学校を建てることはとても難しいのでしょうか。」 2014年、17歳でノーベル平和賞を受賞したパキスタンのマララ・ユスフザイさんの言葉である。彼女は"女性が教育を受ける権利"を訴え続けてきた。今も、女子だからという理由で学校教育を受けられない国…続きを見る
論文「科学課題研究」を中心に据えた女子の理系進学支援教育プログラムの開発(13)「発表者が女子だけ」の課題研究発表会を企画
「発表者が女子だけ」の課題研究発表会を企画  「女子生徒の理系進学支援」の一環として、"科学研究"の成果を研究の途中段階でも気軽に発表できる場として、"発表者が女子だけ"の「集まれ!理系女子・女子生徒による科学研究発表交流会」を2009年から開催している。最初は、近隣の福山大(広島県福山市)を会場にしていたが、年々参加者が増え、2014年度から全国から参加者が集まりやすい場所で開催するようになっ…続きを見る
論文「科学課題研究」を中心に据えた女子の理系進学支援教育プログラムの開発(12)教育プログラムの効果
教育プログラムの効果  2015年度のデータ(次の図)で、本研究の対象としている生命科学コースの方が、文理コースより教育活動を非常に高い割合で肯定的に受け入れており、学習に前向きに取り組んでいる姿勢がうかがえることがわかる。また、卒業後10年が経過しても、現在の生活に生命科学コースの教育が影響していると8割以上が答え、好奇心・理論へ興味などが向上したと8割が判断していることがわかった。保護者・教…続きを見る
論文「科学課題研究」を中心に据えた女子の理系進学支援教育プログラムの開発(11)「自然探究Ⅰ」からの課題研究
「自然探究Ⅰ」からの課題研究  入学して間もない高校1年生の森林実習は、自然体験が非常に少ない女子生徒に「山に入るとは山道をハイキングすることではなく、山道の雑草をかき分けて林床に入るような体験をさせたい」という方向で企画したプログラムである。当初は「樹木の種類を区別できるようになること」と「森林調査を"体験"すること」を目的にして出発した。4泊5日の森林調査での共同作業、そして共同生活が生徒に…続きを見る

このページの先頭へ