• ぼうぼうどりの生物教室
  • ぼうぼうどりの生物教室
  • ぼうぼうどりの生物教室
  • ぼうぼうどりの生物教室
  • ぼうぼうどりの生物教室
  • ぼうぼうどりの生物教室
  • ぼうぼうどりの生物教室
  • ぼうぼうどりの生物教室

第34回 全性連 全国性教育研究大会で発表

2004年8月 5日

2015-DSCN2949.jpg

2015-DSCN2954.jpg

【第5分科会討議資料】
「生命」をテーマとして、高等学校の総合学習でどのような取り組みができるか。
発表者 清心中学校・清心女子高等学校 教諭 秋 山  繁 治

はじめに
2003年度から高校の教育課程に、今までの教科の枠を超えた内容が扱える「総合的な学習」が導入された。「生きる力」を育てるという視点で、「性」も大きなテーマになると考えられた。しかしながら、予想に反して「性」を中心に扱った取り組みが少ないのが現状である。今回は、「総合的な学習」の導入に先駆けて、1999年度から開講している授業「生命」について討議の話題として紹介させていただきたい。

1.なぜ、性教育が進められにくいのか
岡山県性教育協議会で、教師対象の性教育についてのアンケートを行ったことがある。「性教育が必要ですか」という質問に、97%が「必要である」と答えている。その理由については、全体的には「自分を大切にして欲しい」という生徒への直接的な要望をあげているが、男性や年齢の高い世代では「性道徳の低下」という社会への影響を理由としてあげる比率が高くなっている。
この背景には教育活動についての考え方に性別や世代によって大きな違いがあることを示している。教育活動を個人の幸福に帰着させるものと考えるか、または社会に対する役割を果たすものと考えるか、の違いを表している。前者から見れば、後者は個人を大切にする視点を欠いているととらえられるし、逆に後者から前者をみれば、個人主義だととらえられることにもなる。性教育の必要性は多くの教師が認めているが、性別や世代によって求める方向が異なり、そのことが性教育を進めにくくしている。

2.広い視点で性教育を考える
今、高校3年生の性交体験者は4割を越し、未成年の中絶者が年々増えている状況を考えると、私自身は、「避妊を教えることが、性交をすすめる」と危惧するより、性の基礎知識を的確に与えることを優先することの方が学校教育で必要だと思う。また、性については、「女子高生の性の乱れ」と表現されるように女性の性経験ばかりに好奇の目を向け、中絶や望まない妊娠などで「傷つくのは女だけだ」といわれるように、男女で非対称的な意識の歪みが現在でも存在している。そして、同性愛などの性的なマイノリティに対する偏見も根深い。そのことを考えると、性教育は、性のあり方によって差別されない社会をつくっていく役割も担っていかなければならない。

3.総合的な学習での取り組みについて
授業「生命」は、本校の自由選択科目「発展科目」(「総合的な学習」として設定、高校2年生対象、週2時間)の一つとして実施している。この授業では、「性」について学ぶことから出発して、人には多様な考え方があることを知ってもらい、生徒自身に「どのように生きるか」を再考してもらうことを目的にしている。具体的な展開は4つに分けられる。性に関わる基礎知識の習得を目指した「講義」。それから、グループ討議や心理テストなどによる「自己分析」。与えられた課題レポート作成のための「調査活動」。そして、学外からの講師による「講演」である。

4.なぜ、授業「生命」を考えたか
教科の授業で生徒に「教科書にのっていないことは、勉強しなくてもいいですか」と聞かれたことがある。とっさに「興味があったら、高校で学習する内容より詳しく調べていくこともいい勉強だよ」と答えた。中学生、高校生にもなると、「テストに出なければやらなくていい」という損得で物事を考えるような発想になってしまっている生徒も多い。ボランティア活動でさえ、評価されるからやるという損得の発想による活動になってしまう可能性もある。授業「生命」では、正解のない課題(例えば「野外彫刻は猥褻か芸術か」など)を教師が生徒とともに考える過程なども取り入れて、「知識をもった教師が生徒に一方的に教える」という今までの授業とは違う発想で、教師と生徒が興味を共有できるような授業ができないかと考えた。
授業「生命」は今年で6年目になるが、人気のある授業として定着してきている。定員を30名にしているが、受講希望者が多く、倍以上になることもある。教科の授業より集中して聞いている生徒が圧倒的に多いのにびっくりする。授業の感想はe-mailで書くように指示しているが、その日のうちに書いてくる生徒も多く、積極性を肌で感じることができる。このことは「どのように生きるか」を考えるための材料を提供する授業が、今の若い世代にも魅力的なものになる可能性があることを意味しているのではないだろうか。

5.総合的な学習でどのように生徒を評価するか
「総合的な学習」については、5段階で評価される教科の授業とは違ったメッセージを生徒に感じてもらうような工夫が必要である。その点を考慮して、本校では、「学習意欲・態度」「考え方・学び方」「学習成果」という3つの視点で区分して、生徒の各項目についての自己評価も参考にしてA、B、Cの3段階の評価をしている。

  • 投稿者 akiyama : 17:48

最近の記事

論文「科学課題研究」を中心に据えた女子の理系進学支援教育プログラムの開発(15)科学教育への思い
科学教育への思い  私自身は、大学卒業時に研究を志すものの、経済的な理由で大学院進学をあきらめ、高等学校の教員として就職した。40歳過ぎた頃休職して修士課程は修了したものの学位の取得は断念していた。そんな時、大学の先生から「研究できる環境がないなら、高校に研究できる環境をつくればいい」と紹介されたのがSSHだった。 SSHは、生徒の科学研究だけでなく、教師である私にも科学研究の機会を与えてくれた…続きを見る
論文「科学課題研究」を中心に据えた女子の理系進学支援教育プログラムの開発(14)グローバルな視点で理科教育を考える。
グローバルな視点で理科教育を考える  「なぜ銃を与えることはとても簡単なのに、本を与えることはとても難しいのでしょうか。なぜ戦車をつくることはとても簡単で、学校を建てることはとても難しいのでしょうか。」 2014年、17歳でノーベル平和賞を受賞したパキスタンのマララ・ユスフザイさんの言葉である。彼女は"女性が教育を受ける権利"を訴え続けてきた。今も、女子だからという理由で学校教育を受けられない国…続きを見る
論文「科学課題研究」を中心に据えた女子の理系進学支援教育プログラムの開発(13)「発表者が女子だけ」の課題研究発表会を企画
「発表者が女子だけ」の課題研究発表会を企画  「女子生徒の理系進学支援」の一環として、"科学研究"の成果を研究の途中段階でも気軽に発表できる場として、"発表者が女子だけ"の「集まれ!理系女子・女子生徒による科学研究発表交流会」を2009年から開催している。最初は、近隣の福山大(広島県福山市)を会場にしていたが、年々参加者が増え、2014年度から全国から参加者が集まりやすい場所で開催するようになっ…続きを見る
論文「科学課題研究」を中心に据えた女子の理系進学支援教育プログラムの開発(12)教育プログラムの効果
教育プログラムの効果  2015年度のデータ(次の図)で、本研究の対象としている生命科学コースの方が、文理コースより教育活動を非常に高い割合で肯定的に受け入れており、学習に前向きに取り組んでいる姿勢がうかがえることがわかる。また、卒業後10年が経過しても、現在の生活に生命科学コースの教育が影響していると8割以上が答え、好奇心・理論へ興味などが向上したと8割が判断していることがわかった。保護者・教…続きを見る
論文「科学課題研究」を中心に据えた女子の理系進学支援教育プログラムの開発(11)「自然探究Ⅰ」からの課題研究
「自然探究Ⅰ」からの課題研究  入学して間もない高校1年生の森林実習は、自然体験が非常に少ない女子生徒に「山に入るとは山道をハイキングすることではなく、山道の雑草をかき分けて林床に入るような体験をさせたい」という方向で企画したプログラムである。当初は「樹木の種類を区別できるようになること」と「森林調査を"体験"すること」を目的にして出発した。4泊5日の森林調査での共同作業、そして共同生活が生徒に…続きを見る
論文「科学課題研究」を中心に据えた女子の理系進学支援教育プログラムの開発(10)テーマはどのように設定したのか。
テーマはどのように設定したのか。   「生命科学課題研究」で、生命科学コースの4つのグループが取り組んでいるテーマは図のとおりである。これらは大学の研究室のイメージで研究テーマを設定している。  「生命科学課題研究」以外の「自然探究Ⅰ」の実習や「生命」のアンケート調査などから派生したテーマも生徒が希望すれば取り組ませている。  「自然探究Ⅰ」の森林調査から、「遷移段階の異なる森林の二酸化炭素吸収…続きを見る

このページの先頭へ