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「生命科学基礎」 岡山大学院自然科学研究科 富岡憲治先生

2007年2月 5日

テーマ「体内時計:ヒトと生物の環境への時間的調和」

 私たち社会生活を営むヒトにとって、時計は時間を知るための必需品です。学校や会社が始まる時刻、会議や待ち合わせの時刻など、誰でも多かれ少なかれ時間に縛られた生活を余儀なくされています。ところが、身の回りの生き物をよく観察してみると、腕時計や柱時計を持っていない動物や植物でさえもちゃんと時間を知り、地球の自転に伴ってくり返す環境の日周変化にうまく調和して生活していることがわかります。

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 どのようにして生物は時間を知るのでしょうか。生物は環境の変化から時間を読みとるばかりでなく、じつは生物自身が体内に持っている時計(体内時計)によって、時間を知るのです。生物によっては一日を測る時計だけでなく、潮の満ち引き、季節、そして驚くべきことに一年あるいはそれ以上の時を知ることができる時計を持つものまでいます。
 私たちヒトも同様に体内時計を持っていて、しかもその体内時計に束縛された生活をしているといっても過言ではありません。たとえば、私たちの寝起きを支配しているのもその時計です。ふつうの生活をしていると夜には自然に眠くなってきます。大きな時差のあるところに海外旅行をすると、はじめの一週間くらいは夜眠れない、逆に昼は眠いといった時差ボケに悩まされます。また体内時計の不調によって正常な社会生活ができなくなったり、鬱状態に陥ってしまうことも知られています。これらはみな、私たちが体内時計に縛られている証拠です。
 かくも重要な体内時計とはいったいどんなものでしょうか。今日は、まず生物が時計を持っている証拠をあげ、その時計の性質を見ていきます。つづいて生物がどのようにその時計を使っているのか、さらに時計が生物の体のどこにあって、どんな部品から成り立っているのかなど、生物が時間を知るしくみを体内時計を中心にしていろいろな角度から紹介していきたいと思います。また、食事や寝起きといった、ヒトの生活と体内時計との関係についてもお話ししたいと思っております。
 私たちをとりまく環境は、明るさ、温度、湿度といった物理的なものばかりではなく、植物や動物など、ほかの生き物たちとの相互の複雑なかかわり合いの上に成り立っています。しかも、動植物自身が昼夜の変化に適応してそれぞれの種に独自の生活リズムや、春夏秋冬の年周的な生活サイクルを営んでいます。そして、ヒトをも含めた生物たちは、ほかの生物をも含めた環境が織りなすサイクルの中で、微妙なバランスを保ちつつ生活しているわけです。したがって私は、ヒトが住める地球環境を将来にわたって維持していくためにも、いろいろな動植物の生活リズムを解明していく必要があると思うのです。

講演内容

1. 日周期への調和:生物の日周リズム
*バクテリアからヒトまで、動植物が共通に体内時計を持っている

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2. 体内時計の性質
*周期は24時間から少しだけずれている
*温度が変化しても周期はほとんど変わらない
*光や温度サイクルに同調して、正確な24時間周期を刻む
*薬物に対して安定である

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3. 体内時計を使った行動
*活動リズム: 社会活動、雌雄の遭遇、生態的秩序の維持に重要
*太陽コンパスによる方向の認知:ハト、ミツバチ
*時刻の記憶: ミツバチ、ハムスターなど
*日長を測る(光周測時): 昆虫などは日の長さを測ることによって、季節に適応している

4. 体内時計の所在
*高等動物では神経系内にある
 昆虫:脳の一部(視葉)
 鳥類:網膜、松果体
 ほ乳類:脳の視床下部(視交叉上核)

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5. 体内時計が時間を刻む仕組み
*時計遺伝子が時を刻む要素であると考えられている

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6. 体内時計と私たちの健康
*2つの時計:体温と睡眠覚醒のリズムはそれぞれ別の時計によって支配されていると考えられている。
*体内時計の異常による病気
*規則正しい生活の重要性

  • 投稿者 akiyama : 18:22

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