• ぼうぼうどりの生物教室
  • ぼうぼうどりの生物教室
  • ぼうぼうどりの生物教室
  • ぼうぼうどりの生物教室
  • ぼうぼうどりの生物教室
  • ぼうぼうどりの生物教室
  • ぼうぼうどりの生物教室
  • ぼうぼうどりの生物教室

医学部で入試における女性差別があったけど

2018年11月19日

今回の医学部の入試が問題になるずいぶん前に、京都大学で女子の受験者を配慮した入試が行われていたようです。以下は、森嶋通夫・著『智にはたらけば角が立つ』(朝日新聞社・1999)p94-p96からの抜粋です。

 新制の入学試験には私は関係なかった。その代わり、合否決定の会議には出席した。合否の決定は通常、次のようにして機械的に決定されるのだが、その時は横槍が入った。
 通常の手続きとはこうである。まず事務部が、受験生を各科目の点数の総計の順に並べた覧表をつくる。本人の姓名はもちろん、受験番号も伏せられている。次に定員数(300名)の前後の受験者の総計点に注目するよう学部長が注意をし、総計点が大幅に落ちる前までを合格とする。295人目から6人目の間にはっきりした差が見られるなら295人までを合格とする。304人までは踵を接する状態で並んでおり、305人との間に初めて明瞭な差が認められるならば、定員を超えてはいるが304人までを合格とする。
その日もこういう方式で合格者は簡単に決まった。が、その直後に間髪を入れずに青山先生の横槍が入ったのである。
 「これらの合格者のなかに女子学生はおりますか」
 事務長は「いない」と言った。一覧表には、余分となってしまうかなり多くの次点者の点数も書かれていたが、それらのなかにも女子学生はいないと事務長が言い足した。
 「女子学生だけの点数を選り抜いて持ってきてください」
 先生の追及は厳しかった。事務長は事務室に下りていって、14、15人の点数表をつくり、
それを読み上げた。それは惨憺たるものであった。先生はどこの高校の卒業生かわかりますかと事務長に聞き、事務長は学校名を読み上げた。私は「ひょっとしたら、先生の知人の女子学生が受験しているのでないか」といぶかった。私同様に思っていた人も大勢いたかもしれない。
 先生は「わかりました」と言い、それからなぜ女子学生を入学させねばならないかを説明し始めた。
 「将来の社会は男女同権の社会である。大学はそういう社会をつくっていく義務がある。それだのに、われわれが男女に差をつけずに入学者を決定すれば、いつまでたっても女子学生は入学しない。つまり大学自身が男女同権の社会をつくるのを妨害しているのです。男の子は思う存分、受験勉強ができる。しかし女の子は夕食前には、お母さんの炊事を手伝わなければならない。これでは試験の結果に差ができるのは当然です。男女を平等にするためには、まず男女を不平等に扱わねばなりません」
 当時にはまだ逆差別という言葉はなかったが、「まず逆差別をしろ」という先生のロジックは教授会ですぐ受け入れられた。しかし何人合格させるかについては、指令も基準も枠もないから、皆がそれぞれに考えている人数はなかなか収斂しなかった。
 結局、二人合格させようということで合意が成立したが、彼らを一般の合格者と同じに見なすことは、外部から万一文句が出た時、言い訳に困るからということになって、彼らを「女子特別入学者」とすることにした。こうして京大は女子教育に門戸を開いた。青山先生の勝利であり、功績である。

  • 投稿者 akiyama : 08:22

最近の記事

化学グラコン・審査委員長賞「2つの能力を野生酵母菌に求めて」
パソコン内のファイルを整理するためにあれこれと見返していたところ、『高校化学グランドコンテスト ドキュメンタリー 高校生・化学宣言 part 6』という本に掲載するために、生徒が当時書いた原稿が見つかりました。そこで今回、内容に大きく手を加えることはせず、簡単な校正を行ったうえで公開することにしました。 なお、ここに示す文章は、生徒自身が研究の歩みを振り返って書いた原稿です。そのため、書籍に掲載さ…続きを見る
デンマークでの人々の生き方と社会の仕組み
『第3の時間』井上陽子著を読んでいます。本書は、39歳でデンマークに移住した著者が、そこで出会った「短時間労働でありながら豊かな暮らしを実現する人々の生き方」と、それを支える社会の仕組みを紹介した一冊です。 著者が提示する「第3の時間」とは、時計で測られる「第1の時間(客観的・社会的時間)」でも、心の流れとして感じられる「第2の時間(主観的・心理的時間)」でもなく、「質としての時間」を指します。そ…続きを見る
マレーシアのツン・フセイン・オン大学と高大連携で実施する環境学習
山脇有尾類研究所が企画して、マレーシアのツン・フセイン・オン大学(UTHM)と連携協定を結び、文科省SSH指定校の山脇学園高等学校の生徒対象で、2026年8月16日から8月25日の10日間の日程で、環境学習を目的にした海外研修を実施することになりました。 …続きを見る
有尾類との出会いで学んだこと
雪花が散る林でオオイタサンショウウオの産卵を観察 2009年1月24日、九州はこの年一番の寒波に見舞われていた。大分県国東市での野外調査である。午前10時、山際を散策していると、林の中に水田跡の湿地があった。残雪が残る静かな林の中で、溜まりの水面がわずかに波打っているのが見えた。近寄ってみると、オオイタサンショウウオが群がり、まさに産卵の最中であった(写真)。 これまで両生類は、雨が降り気温が上昇…続きを見る
藤井風「帰ろう」、「満ちていく」、「prema」そして、「grace」
藤井風は、岡山県浅口郡里庄町から、岡山市東区にある岡山県立岡山城東高校(2015年度入学:音楽学類ピアノ専攻)に通っていた。私の息子(2004年度入学)も娘(2007年度入学)も、同校に毎日自転車で通学していた。藤井風もまた、里庄から東岡山まで、約50kmの道のりをJRで1時間かけて通っていたのだろう。 里庄は、教え子の息子が小学生の頃からサンショウウオの研究について相談を受けており、何度か訪れ…続きを見る
2027年度共学化。清心女子高校はSSH指定10年間で何を目指していたか。
清心女子高等学校を9年前に退職しました。今改めて東京の新たな学校で2024年度からSSH採択され、今度は、学校内に生徒の科学研究の場所を「研究所」という形で提供する試みを実践しています。 清心女子高校のSSH申請案の作成から、2006年度の採択以降2016年度までの10年間、SSH主任および生命科学コース主任として、何を目指して取り組んできたのかを、改めて振り返りたいと思います。 2025年10…続きを見る

このページの先頭へ