• ぼうぼうどりの生物教室
  • ぼうぼうどりの生物教室
  • ぼうぼうどりの生物教室
  • ぼうぼうどりの生物教室
  • ぼうぼうどりの生物教室
  • ぼうぼうどりの生物教室
  • ぼうぼうどりの生物教室
  • ぼうぼうどりの生物教室

子どもたちに生き物との触れ合いを通して自然を観察する目を育てたい

2020年5月 6日

2014-IMG_7277.jpg

 1989年から小型サンショウウオを飼育し始めてちょうど30年になる。生物教室に同僚が水田に流れ込む溜りで採取したというバナナ状の得体のしれない卵嚢を持ち込んできた。孵化した幼生は、カエルのオタマジャクシの形ではなく、外鰓をもった魚のような形をしていた。湧水近くの溜りに産卵する止水性のカスミサンショウウオ(現在のセトウチサンショウウオ)の卵であった。孵化した幼生は、変態後上陸し、2年目に産卵させることができた。しかし、残念ながら、その時の卵は正常に発生しなかった。それ以降、飼育下で正常に発生する受精卵を得ることが私自身の研究のテーマになった。勤務していた高校の生物教室は、両生類専用の「動物園」となり、生徒が毎日、生物教室を訪れ、餌やりと科学研究の場になった。そして、研究に取り組む生徒は、野外での調査を通して、人為的な開発によって両生類の繁殖地が激減していることを目の当たりにし、自然保護について考えるようにもなった。その流れは現在の大学の研究室でオオイタサンショウウオを研究している高校生にも引き継がれている。
 小学校学習指導要領の生活科には動物飼育が設定され、理科には「自然を愛する心情や主体的に問題解決しようとする態度を養う」という記載がある。そこで、高校生の総合的な学習の時間に、出身小学校の飼育動物の調査レポートを作成するという宿題を課したことがある。そのレポートをみて、生徒たちに学校飼育動物との思い出が非常に少ないことを実感した。高校生に「家のペットと学校飼育動物では、死んだ時にどちらが悲しいか」と質問すると「ペットだ」と答えが返ってくる。それは、身近に接した時間が長い動物ほど愛着がわくという当たり前のことに起因しているのではないだろうか。身近に触れる体感が必要なのだ。あるレポートには、飼育舎の前に「飼育係以外の生徒は立ち入らないように」と注意書きの看板がある写真が貼られていた。学習指導要領とかけ離れた現実がある。また、学校現場での動物飼育は、担当教員の知識不足、飼育経費の不足、飼育作業の負担などが原因となって敬遠する流れを生み、鳥インフルエンザの問題と相まって激減している。そして、子どもたちの自然体験については、学校以外の公的機関や民間団体が行う自然体験活動への小学生の参加率は,どの学年でもおおむね低下しており,特に小学校4~6年生は2006年度から2012年度にかけて10%ポイント以上低下している(平成27年度版『子ども・若者白書』)。
 地球規模で環境問題に目を向けなければならないという状況で、人為的開発による自然環境の悪化、汚染物質の流出、希少動植物の保護や外来生物が問題になっているものの、命や自然の大切さを育んでほしい子どもたちは、学校での動物との触れ合いの機会や自然体験に恵まれない状況にあるということになる。
 サンショウウオの飼育を通して生徒と接してきた経験から、今の子どもに、"動物に直接触れること"と"自然体験を多く持つこと"の必要性を感じるようになった。次の時代をになう子どもたちの自然を観察する目を育てることが、今の大人たちの責務ではないだろうか。

【参考】日本両生類研究会20周年記念誌『両生類に魅せられて(カエルとサンショウウオの長期研究と最新の研究)』日本両生類研究会(2019)

  • 投稿者 akiyama : 22:31

最近の記事

化学グラコン・審査委員長賞「2つの能力を野生酵母菌に求めて」
パソコン内のファイルを整理するためにあれこれと見返していたところ、『高校化学グランドコンテスト ドキュメンタリー 高校生・化学宣言 part 6』という本に掲載するために、生徒が当時書いた原稿が見つかりました。そこで今回、内容に大きく手を加えることはせず、簡単な校正を行ったうえで公開することにしました。 なお、ここに示す文章は、生徒自身が研究の歩みを振り返って書いた原稿です。そのため、書籍に掲載さ…続きを見る
デンマークでの人々の生き方と社会の仕組み
『第3の時間』井上陽子著を読んでいます。本書は、39歳でデンマークに移住した著者が、そこで出会った「短時間労働でありながら豊かな暮らしを実現する人々の生き方」と、それを支える社会の仕組みを紹介した一冊です。 著者が提示する「第3の時間」とは、時計で測られる「第1の時間(客観的・社会的時間)」でも、心の流れとして感じられる「第2の時間(主観的・心理的時間)」でもなく、「質としての時間」を指します。そ…続きを見る
マレーシアのツン・フセイン・オン大学と高大連携で実施する環境学習
山脇有尾類研究所が企画して、マレーシアのツン・フセイン・オン大学(UTHM)と連携協定を結び、文科省SSH指定校の山脇学園高等学校の生徒対象で、2026年8月16日から8月25日の10日間の日程で、環境学習を目的にした海外研修を実施することになりました。 …続きを見る
有尾類との出会いで学んだこと
雪花が散る林でオオイタサンショウウオの産卵を観察 2009年1月24日、九州はこの年一番の寒波に見舞われていた。大分県国東市での野外調査である。午前10時、山際を散策していると、林の中に水田跡の湿地があった。残雪が残る静かな林の中で、溜まりの水面がわずかに波打っているのが見えた。近寄ってみると、オオイタサンショウウオが群がり、まさに産卵の最中であった(写真)。 これまで両生類は、雨が降り気温が上昇…続きを見る
藤井風「帰ろう」、「満ちていく」、「prema」そして、「grace」
藤井風は、岡山県浅口郡里庄町から、岡山市東区にある岡山県立岡山城東高校(2015年度入学:音楽学類ピアノ専攻)に通っていた。私の息子(2004年度入学)も娘(2007年度入学)も、同校に毎日自転車で通学していた。藤井風もまた、里庄から東岡山まで、約50kmの道のりをJRで1時間かけて通っていたのだろう。 里庄は、教え子の息子が小学生の頃からサンショウウオの研究について相談を受けており、何度か訪れ…続きを見る
2027年度共学化。清心女子高校はSSH指定10年間で何を目指していたか。
清心女子高等学校を9年前に退職しました。今改めて東京の新たな学校で2024年度からSSH採択され、今度は、学校内に生徒の科学研究の場所を「研究所」という形で提供する試みを実践しています。 清心女子高校のSSH申請案の作成から、2006年度の採択以降2016年度までの10年間、SSH主任および生命科学コース主任として、何を目指して取り組んできたのかを、改めて振り返りたいと思います。 2025年10…続きを見る

このページの先頭へ