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アカハライモリ

2006年3月29日

アカハライモリ Cynops Pyrrhogaster

アカハライモリ
岡山県産 撮影:秋山繁治

日本にいるアカハライモリ(Cynops pyrrhoganter)は、有尾類の仲間で「アカハラ」といわれるように、腹部が赤いという特徴がある。
体長は成体で、雌が10~13cm、雄がやや小型で8~13cmくらいである。尾が長く、体長のほぼ半分をしめる。
アカハライモリは、本州から九州(奄美諸島を除く)に分布しているが、外部形態や繁殖行動からいくつかの異なる地方種族が認められている。
日本の固有種であるアカハライモリの分布の北限である下北半島が、イモリ科全体の北限になっている。
外形が似た小型サンショウウオが県内にいるが、イモリの皮膚はザラザラしているのに対して、サンショウウオはヌルヌルしていることで容易に区別できる。
ため池や水田などの止水域に生活しており、圃場整備事業などの影響を受け、個体数が減少している。
イモリとは、「井守」と書き、「井」が「井戸」や「水田」を表すことから、「井戸を守る」とか「水田を守る」と名付けられた。

★イモリについての論文発表の要旨
(和文題名)アカハライモリの貯精嚢精子の季節変動 (Seasonal Changes of Sperm Storage within the Spermatheca of the newt Cynops pyrrhogaster)

1.一般的採集と飼育

■一般的採取方法
(見つけ方)
平地の池に多いが、田、細い流れ、山地の池などにもおり、繁殖期の春から夏のはじめ頃が採取しやすい。
(捕まえ方)
 レバーを水の中につるし、集まったところを網ですくう方法が、図鑑などに紹介されている。
(運び方)
 持ち帰るときは、温度が上がらないように注意する。

■飼育方法
(卵について)
卵は,野外では1つずつ葉などに巻かれたようにして産卵されるので,まとまった数を扱うのは困難である。そこで,雌にゴナトロピンを注射して産卵させる方法をとった。野外では,配偶行動の後,雄が産み落とした精包を雌が貯精嚢に取り込み、卵は総排出腔から産卵する直前に精子を受け取り受精する仕組みになっている。まだ、産卵していない早春に、雌だけを捕獲して、ホルモンを投与して排卵を誘発することにより、効率よく受精卵を得られることができる。また、繁殖期は4月から6月であるが、10月下旬から11月にかけても雌に求愛していている雄を見ることがある。この時期にはすでに成熟した卵をもっている。今回あえて産卵期でない1月から2月にかけてホルモンによる産卵誘発が可能であるということを確認した。産卵を誘発するためにゴナトロピンを用いるが、通常は50単位で十分であるが、1~2月の時期には,100単位2回の注射が有効であった。1匹の雌で2回の注射した場合の産卵数は、38~68個であった。この時期に、室温を25℃に上げて飼育すると、注射をうっていない雄の方も婚姻色を呈する。
(幼生)
幼生の飼育は、一般的にイトミミズを餌にする場合が多い。幼生は変態後一定の期間は餌をとらないので、3週間後ぐらいから餌をやり始めればよい。幼生の外形は、カスミサンショウウオと区別がつきにくいが、変態前には色素がやや濃いことと、外形がややスマートな形をしていることで区別できる。変態は、温度が高いほど早いが、25℃以上に上げない方がよい。幼生を自動車などで移送する場合は、水を浅くはり、水草など入れて衝撃を少なくする配慮が必要である。 
(変態後)
変態直後は餌をとらないが、しばらくすると餌をとるようになる。水を浅めにはり、上陸できる陸地をつくっておけばよい。水は1週間に一度ぐらいは交換する必要がある。

2.生活史

■生態などの基礎的知識
 アカハライモリは、産卵期が4月から6月頃で、この時期には昼間でも活動的になる。池や小川の水草に1つずつ卵を産みつける。水温20℃で約3週間ぐらいで孵化する。幼生は3対の外鰓をもっている。幼生は、カスミサンサンショウウオの幼生に似ているが、やや黒ずんでいる。特に変態前に色素が多くなる。まず前肢ができ、続いて後肢ができてくる。変態後、しばらく陸上生活をする。水辺からかなり離れた朽ち木の下などに潜んでいるのに出会うことがある。成体になってまた水中生活へもどる。
(生息地域)
 アカハライモリが最もよく見られるのは、池である。具体的な生息地は、岡山県南の倉敷市や岡山市にもあるが、生息数は少ないので、実験用に捕獲するのは向かない。県中部から北部にかけての地域では、数多く生息する場所もあり、水中でうごめいている姿を見つけることができる。
参考文献 岡山県環境部自然保護課、保護部岡山県の両生爬虫類(1980)
(捕獲)
 一般には、繁殖期であれば昼でも行動しているので見つけやすいが、水田の水を落とす10月頃にも、小川のよどみや水田の側溝で捕獲することができる。また、一度に多くの個体を捕獲するには、12月頃がよい。越冬のために、側溝の枯れ葉などが吹きだまったところに集まっていのを見つけることができる。捕獲には、たも網が使いやすい。捕獲した個体は、下着用洗濯ネットに入れれば、逃げられることもなく、また、取り扱いがしやすい。ネットに入れたままの状態で、大型タッパーや蓋のできるバケツに入れて持ち帰る。水はあまり深く入れないようにする。
(運搬)
 比較的強い性質であるが、濁った水の中で激しく揺らしながら長時間運ぶことは避けたい。先に説明したネットに入れたまま運ぶと水の中で激しく揺れ動くことが少ないので安全に運ぶことができる。また、夏に自動車の中に入れたままにすると、水温が上昇し、死亡してしまうことがあるので、高温に注意したい。

■餌
・イトミミズ
 ペットショップなどで入手できるので、養殖する必要がない。幼生の餌として最もよく使われる。短所は、酸素不足で死にやすいことである。走触性があるため多数の個体が集まって、大きな塊をつくる習性がある。そのため、極端な酸素不足に陥り、短時間で全滅することもある。また、餌として与える量が多すぎると、水の汚染を招くこともある。浅いバットに水を浅くはって、集塊を時々分散させるようにすれば、比較的長い間維持できる。 
・フタホシコウロギ
 熱帯性のコオロギである。普通のコウロギと異なり、1年中繁殖が可能なので、与える個体に合わせて、違った大きさのものを与えることができる。動くものしか捕食しないカエルやサンショウウオの仲間に、特に有用である。
・冷凍アカムシ
 熱帯魚の餌として、一般に普及している。生きているものと冷凍しているもの、乾燥しているものがある。生きているものは、釣りの餌として入手できるが、いつでも手に入るものではない。冷凍アカムシはペットショップで、いつでも入手できる。解凍してから、ピンセットで給餌すればよい。
・アフリカツメガエル用のペレット
 理科教材を扱う店では、アフリカツメガエルの餌として売っている魚粉ペレットが、イモリの成体を飼うのに使いやすい。安価であり、また手間もかからないのが好ましい。
・ミルワーム
 鳥用の餌としペットショップで入手できる。岡山県自然保護センターでも、タンチョウヅルの餌に使われている。チャイロコメノゴミムシダマシという甲虫の幼虫で、アメリカの虫入りキャンディの材料として話題になったことがある。成体の餌に使うことができる。プラスチック容器に、フスマと一緒に入れて売っている。繁殖させるには、金属製の菓子箱などを用意し、蓋に通気のための小さな穴を開け、フスマと幼虫を入れておけば勝手に繁殖する。年に2度くらいフスマを補充するだけで、ほとんど手間がかからない。


(雌雄の区別)
 ・雄の肛門は雌よりふくれている。
 ・雄の尾は、ひれのよう上下が幅広く、先の方が急に細くなっている。雌の尾は剣状に長い。
 ・雄は繁殖期に白みがかった紫色の婚姻色になる。

(繁殖行動)
繁殖期には、雄が雌の体にあごをこすりつけたり、尾の先を雌の鼻先で振るわせたりするようになる。次の5段階(1-5)の求愛行動が見られる。
 1..雄による雌の識別
 2..雄による雌の進路の妨害と尾振り行動
 3..雌による雄への追従
 4..雄による精包の放出
 5..雌による精包の取り込み


雄が精包を落としているところ、前側が♂、後ろが♀。

■参考文献
学研の図鑑:は爬虫類両生類(学研)
旺文社図鑑:生きものの飼い方(旺文社)
図解動物飼育の事典:岡田要(東陽)
日本の両生類・爬虫類:松井孝爾(小学館)
川と池と生物:菅野徹(小学館) 
実験生物講座、1、生物材料調整法(丸善)
西岡みどり:両生類.実験生物講座、1、生物材料調整法、82-95.丸善(1989)
岩波洋造・森脇美武:絵をみてできる生物実験、28-29.講談社(1983)
佐藤國康・秋山繁治:コンクリート水路の底にいたカスミサンショウウオ。LETTER FROM NATURE、1(2)、岡山の自然を愛する会(1995)
松井正文:両生類の進化、96-101、210-212、224-225、東京大学出版会(1996)
秋山繁治:岡山県にすむ有尾類(幼生を中心に).自然保護センターだより、2-3、岡山県自然保護センター(1995)
秋山繁治:岡山県高等学校教育研究会理科部会会誌第47号、20-28
秋山繁治:孵化後実験室内で飼育し産卵したカスミサンショウウオ.両生爬虫類研究会誌、41、1-5(1992)
秋山繁治:早春に産卵する両生類の仲間カスミサンショウウオ.自然保護センターだより、4-5、岡山県自然保護センター(1993)
秋山繁治:飼育下のカスミサンショウウオの繁殖、両生爬虫類学雑誌、16(2)、62(1995)

  • 投稿者 akiyama : 15:58

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