• ぼうぼうどりの生物教室
  • ぼうぼうどりの生物教室
  • ぼうぼうどりの生物教室
  • ぼうぼうどりの生物教室
  • ぼうぼうどりの生物教室
  • ぼうぼうどりの生物教室
  • ぼうぼうどりの生物教室
  • ぼうぼうどりの生物教室

有尾類の保護

2006年3月29日

両生類は、水辺環境が全くない場所では生きることができない。カスミサンショウウオの飼育をしていて変態期に蓋をするのを忘れていて、容器の外に逃げ出した個体の多くを、水分欠如が原因で殺してしまったことがある。両生類は、水分をまったく補給できない環境では一晩で死んでしまうのである。このように水との関係が密接な両生類にとって、最近の水田の基盤整備や土地造成などの開発工事は、その生息に深刻な影響を与えている。水辺環境は生命線なのである。水田地帯や宅地を流れる河川の多くは、3面コンクリートで固められ、ため池も出水口付近だけでなく、周囲をぐるりとコンクリートで固められた姿をよく見るようになった。人間にとっては、コンクリート化は、メンテナンスに費用がかからず、管理しやすくするための合理的な方法であるだろう。しかしながら、一方で植物は繁殖しにくく、水が浄化されにくくなり、水底に汚泥がたまって悪臭を放つようになっている。また、ため池では、コンクリートの表面に藻類が付着し、滑りやすくなり、子どもが近寄るのも危険な池になり、周囲を金網の柵が取り付けられることになる。人間が近寄らないことは、子ども達にいたずらされる機会が減るということで、生物にとっていいことだろうか。コンクリート化によって、卵が孵化し成長するのに欠かせない環境の水質を悪化し、土や石の隙間にある越冬場所が無くなり、植物に群がる餌となる昆虫を減少している。湯川秀樹の「人間と自然」と題した作品の冒頭に「自然は曲線を創り、人間は直線を創る」という言葉がある。「遠近の丘陵の輪郭、草木の枝の一本一本、葉の一枚一枚の末にいたるまで,無数の線や面が錯綜しているが、その中に一つとして真直ぐな線や完全に平らな面はない。これに反して、田園は直線をもって区画され、その間に点綴されている人家の屋根、壁等のすべてが直線と平面とを基調とした図形である」。さらに話は「しかし、さらに奥深く進めば再び直線的でない自然の真髄に触れるのではなかろうか」と話は進んでいく。理論物理学の学者の話であるが、今後の自然に対する関わり方に示唆をあたえてくれるように感じられる。湯川の言う通り、人間が直線を好むのは、それが簡単な規則性に従うので扱いやすいからであろう。このように人間はこれまで合理的を求めて人間社会は発展させ、豊かにしていったのは確かである。かといって、今さら元の生活に戻すことは不可能である。では、どうしたらいいのだろうか。こういう時期だからこそ。知識を深め、人間の豊かさをあらためて問い直すことによって、人間の生活と生物の生きやすい環境のバランスを考えた新しい局面に遭遇できるのではないだろうか。両生類の保護では、繁殖地を保護するだけでなく、繁殖地に結びついた後背地の森林を含めた生態系全体の保護の必要を考えなければならない時代が到来している。
(『ため池の自然』(信山社)より一部抜粋:秋山繁治)

  • 投稿者 akiyama : 15:51

最近の記事

化学グラコン・審査委員長賞「2つの能力を野生酵母菌に求めて」
パソコン内のファイルを整理するためにあれこれと見返していたところ、『高校化学グランドコンテスト ドキュメンタリー 高校生・化学宣言 part 6』という本に掲載するために、生徒が当時書いた原稿が見つかりました。そこで今回、内容に大きく手を加えることはせず、簡単な校正を行ったうえで公開することにしました。 なお、ここに示す文章は、生徒自身が研究の歩みを振り返って書いた原稿です。そのため、書籍に掲載さ…続きを見る
デンマークでの人々の生き方と社会の仕組み
『第3の時間』井上陽子著を読んでいます。本書は、39歳でデンマークに移住した著者が、そこで出会った「短時間労働でありながら豊かな暮らしを実現する人々の生き方」と、それを支える社会の仕組みを紹介した一冊です。 著者が提示する「第3の時間」とは、時計で測られる「第1の時間(客観的・社会的時間)」でも、心の流れとして感じられる「第2の時間(主観的・心理的時間)」でもなく、「質としての時間」を指します。そ…続きを見る
マレーシアのツン・フセイン・オン大学と高大連携で実施する環境学習
山脇有尾類研究所が企画して、マレーシアのツン・フセイン・オン大学(UTHM)と連携協定を結び、文科省SSH指定校の山脇学園高等学校の生徒対象で、2026年8月16日から8月25日の10日間の日程で、環境学習を目的にした海外研修を実施することになりました。 …続きを見る
有尾類との出会いで学んだこと
雪花が散る林でオオイタサンショウウオの産卵を観察 2009年1月24日、九州はこの年一番の寒波に見舞われていた。大分県国東市での野外調査である。午前10時、山際を散策していると、林の中に水田跡の湿地があった。残雪が残る静かな林の中で、溜まりの水面がわずかに波打っているのが見えた。近寄ってみると、オオイタサンショウウオが群がり、まさに産卵の最中であった(写真)。 これまで両生類は、雨が降り気温が上昇…続きを見る
藤井風「帰ろう」、「満ちていく」、「prema」そして、「grace」
藤井風は、岡山県浅口郡里庄町から、岡山市東区にある岡山県立岡山城東高校(2015年度入学:音楽学類ピアノ専攻)に通っていた。私の息子(2004年度入学)も娘(2007年度入学)も、同校に毎日自転車で通学していた。藤井風もまた、里庄から東岡山まで、約50kmの道のりをJRで1時間かけて通っていたのだろう。 里庄は、教え子の息子が小学生の頃からサンショウウオの研究について相談を受けており、何度か訪れ…続きを見る
2027年度共学化。清心女子高校はSSH指定10年間で何を目指していたか。
清心女子高等学校を9年前に退職しました。今改めて東京の新たな学校で2024年度からSSH採択され、今度は、学校内に生徒の科学研究の場所を「研究所」という形で提供する試みを実践しています。 清心女子高校のSSH申請案の作成から、2006年度の採択以降2016年度までの10年間、SSH主任および生命科学コース主任として、何を目指して取り組んできたのかを、改めて振り返りたいと思います。 2025年10…続きを見る

このページの先頭へ