• ぼうぼうどりの生物教室
  • ぼうぼうどりの生物教室
  • ぼうぼうどりの生物教室
  • ぼうぼうどりの生物教室
  • ぼうぼうどりの生物教室
  • ぼうぼうどりの生物教室
  • ぼうぼうどりの生物教室
  • ぼうぼうどりの生物教室

1997性教育の課題 ④性教育を取り巻く状況(生徒指導)

1997年8月 1日

 性に関する指導には,授業などで生徒に考える材料である知識を提供するというタイプ,つまり「知識をあたえる形」と,もう一つは生徒の行動を一般的生徒として好ましい方向へ導く,あるいは行動を取り締まるというタイプ,つまり「行動を制限する形」がある。前者は一般に授業で行われ,後者は,生徒指導という教育活動として行われる。
 性に関する行動は,それだけで単独に規制されるものではない。逆に言えば,学校教育の歴史的な流れを反映し,生徒指導の一部として性に関する行動が規制されている。今の学校で生徒指導はどのように行われ,また,どのような方向に向かっているのだろうか。生徒指導が時代とともにどのように変遷したか,その背景も含めて調べることによって,答えが鮮明に浮かび上がってくると思われる。また,性に関する指導の方向も自ずと見えてくると思われる。
 私が教師になった1980年頃は,校内暴力が大きな問題となり,「教育の荒廃」が主張され,教育改革についての論議が盛んになり始めた時期である。そして,対応策として「全教師が一体となった指導体制の確立」,「地域との連帯」が求められた。服装や髪型の適・不適など主観的な判断が入りやすいものについては,具体的に色や寸法が校則のなかに明文化され,生徒に強制力をもった一律の指導がなされた。全校生徒を運動場に並べて一斉の頭髪の検査をした学校もあると聞いた。本校も例外ではなく,私が赴任した1983年から1993年まで,頭髪の長さ,スカートの丈,爪の手入れについて,月に一回,終礼時にクラス担任の立ち会いのもとに,生活委員2名と生徒指導係の教師1名でクラス全員を並べて一人ずつ検査項目をチェックする指導が行われていた。これは,一地方の現象ではなく,全国的に行われた指導形態である。15年前に私は愛知県に住んでいたが,近くの中学校で,朝,校門の前で生徒を一列に並べて持ち物検査をしていた中学校もあった。何か収容所のような雰囲気が感じられたのを思い出す。
 そして,年月がたち,校内暴力が沈静化に向かい出したとき,今度は,細かい規則による一律で硬直した指導(「管理教育」と呼ばれる指導)に対する批判が表面化してきた。1985年には日弁連が中学・高等学校の校則を調べ,「校則と管理主義が結びつき,違反した生徒への体罰や,登校拒否,いじめをまねいている」という報告を提出した。また,1986年に臨教審が,「学校が過度に形式主義的・瑣末主義的な校則に頼る風潮が根強い」と報告した。
 校則に対する批判は,教育現場を知らない人の意見であるという,教師のとらえ方は根強いが,昨今では各学校ごとに校則の内容の点検及び簡素化を中心とした改善が行われつつある。
 また,生徒指導にかかわる問題として「子どもの権利条約」がある。この条約は1994年3月29日国会で承認,参議院外務委員会の議決を受けて,国連に批准書が提出され,1994年5月22日に正式に発行した。この条約は,国際条約であり,法的拘束力をもち,国内法と矛盾があれば,国内法を改正を求めることできる。この条約の「子ども」とは,「18歳未満のすべての者」であり,当然,高校生も含まれる。
 現在,「保護者の教育情報開示に関する直接請求権」や,「生徒の意見表面権」などについて,この条約によって新たに権利が発生したととらえる側と,これらの権利は既存の法規ですでに擁護されているとする側にわかれて論議されている。1985年に「女子差別撤廃条約」が批准された。「子どもの権利条約」の批准は,このような人権に関する世界的な流れの中の出来事として,理解しなければならない。性教育をセクシュアリティーの視点からの教育ととらえる考え方も,その世界的な流れの中にあることを理解しなければならない。

  • 投稿者 akiyama : 08:01

最近の記事

論文「科学課題研究」を中心に据えた女子の理系進学支援教育プログラムの開発(15)科学教育への思い
科学教育への思い  私自身は、大学卒業時に研究を志すものの、経済的な理由で大学院進学をあきらめ、高等学校の教員として就職した。40歳過ぎた頃休職して修士課程は修了したものの学位の取得は断念していた。そんな時、大学の先生から「研究できる環境がないなら、高校に研究できる環境をつくればいい」と紹介されたのがSSHだった。 SSHは、生徒の科学研究だけでなく、教師である私にも科学研究の機会を与えてくれた…続きを見る
論文「科学課題研究」を中心に据えた女子の理系進学支援教育プログラムの開発(14)グローバルな視点で理科教育を考える。
グローバルな視点で理科教育を考える  「なぜ銃を与えることはとても簡単なのに、本を与えることはとても難しいのでしょうか。なぜ戦車をつくることはとても簡単で、学校を建てることはとても難しいのでしょうか。」 2014年、17歳でノーベル平和賞を受賞したパキスタンのマララ・ユスフザイさんの言葉である。彼女は"女性が教育を受ける権利"を訴え続けてきた。今も、女子だからという理由で学校教育を受けられない国…続きを見る
論文「科学課題研究」を中心に据えた女子の理系進学支援教育プログラムの開発(13)「発表者が女子だけ」の課題研究発表会を企画
「発表者が女子だけ」の課題研究発表会を企画  「女子生徒の理系進学支援」の一環として、"科学研究"の成果を研究の途中段階でも気軽に発表できる場として、"発表者が女子だけ"の「集まれ!理系女子・女子生徒による科学研究発表交流会」を2009年から開催している。最初は、近隣の福山大(広島県福山市)を会場にしていたが、年々参加者が増え、2014年度から全国から参加者が集まりやすい場所で開催するようになっ…続きを見る
論文「科学課題研究」を中心に据えた女子の理系進学支援教育プログラムの開発(12)教育プログラムの効果
教育プログラムの効果  2015年度のデータ(次の図)で、本研究の対象としている生命科学コースの方が、文理コースより教育活動を非常に高い割合で肯定的に受け入れており、学習に前向きに取り組んでいる姿勢がうかがえることがわかる。また、卒業後10年が経過しても、現在の生活に生命科学コースの教育が影響していると8割以上が答え、好奇心・理論へ興味などが向上したと8割が判断していることがわかった。保護者・教…続きを見る
論文「科学課題研究」を中心に据えた女子の理系進学支援教育プログラムの開発(11)「自然探究Ⅰ」からの課題研究
「自然探究Ⅰ」からの課題研究  入学して間もない高校1年生の森林実習は、自然体験が非常に少ない女子生徒に「山に入るとは山道をハイキングすることではなく、山道の雑草をかき分けて林床に入るような体験をさせたい」という方向で企画したプログラムである。当初は「樹木の種類を区別できるようになること」と「森林調査を"体験"すること」を目的にして出発した。4泊5日の森林調査での共同作業、そして共同生活が生徒に…続きを見る
論文「科学課題研究」を中心に据えた女子の理系進学支援教育プログラムの開発(10)テーマはどのように設定したのか。
テーマはどのように設定したのか。   「生命科学課題研究」で、生命科学コースの4つのグループが取り組んでいるテーマは図のとおりである。これらは大学の研究室のイメージで研究テーマを設定している。  「生命科学課題研究」以外の「自然探究Ⅰ」の実習や「生命」のアンケート調査などから派生したテーマも生徒が希望すれば取り組ませている。  「自然探究Ⅰ」の森林調査から、「遷移段階の異なる森林の二酸化炭素吸収…続きを見る

このページの先頭へ