台北市立動物園にいるパンダ(トゥアントゥアン/団団、ユアンユアン/円円など)は、ただの動物展示以上に台湾-中国(中華人民共和国)との政治的な文脈の「パンダ外交」で注目されてきました。
パンダは希少動物で、ワシントン条約による規制があるので、「輸出」には厳格な管理があり、他国の動物園に貸与する形式をとることが一般的です。
台湾では、1980~90年代からパンダ導入を望む声があったものの、中国-台湾の政治的対立や保育・飼育能力などを巡って慎重な態度が取られてきました。たとえば、2005年5月、中華人民共和国側がパンダ2頭を台北に贈るという提案を発表しましたが、当時の台湾の李登輝・陳水扁政権はこれを外交プロパガンダと見なして受け入れを拒否しました。輸出入許可の扱いには、中華人民共和国・台湾双方とも、「国内取引と見なす」扱いを主張したり、それを認めるような解釈を採ったりした経緯があります。
2008年の台湾総統選で国民党(KMT)の馬英九が当選し、中国との関係を緩和する方針を取ったことを背景に、パンダ受け入れが実現しました。同年12月23日、パンダ トゥアントゥアン(Tuan Tuan, 団団)とユアンユアン(Yuan Yuan, 円円)が台湾に到着し、台北市立動物園が展示するパンダ館を整備して受け入れました。
現在、雄のトゥアントゥアンは、2022年11月19日に脳腫瘍の疑いなどを理由に安楽死の形で亡くなり、雌のユアンユアンは存命中ですが、健康維持が課題とされています。