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クラス担任の視点でみたSSHと生命科学コースの歩み【連載】第6回

2026年2月17日

この連載は、清心中学校清心女子高等学校 紀要 No.15 p29-33に掲載している教科では数学担当の橋岡源九郎「生命科学コースのホームルーム担任から始まった学び」を整理して紹介したものです。原文のダウンロードできます。

中学生への課題研究(SSHの種をまくということ)
生命科学コースの担任を6年間務める中で、私はある思いを抱くようになりました。課題研究は確かに大変です。しかし、その困難を乗り越える過程で生徒が大きく成長する姿を、何度も目にしてきました。この経験を、高校入学後に初めて知るのではなく、もっと早い段階で体験させることはできないだろうか――そう考えるようになったのです。
そこでSSH指定8年目から、本校併設の清心中学校3年生を対象に、希望者制の「数学課題研究」を始めました。
生命科学コースに進学してくる生徒の中には、活動の実態を十分に理解しないまま志望していた者もいました。もちろん入学後に学びは深まりますが、「研究とは何か」を事前に体験しておくことは大きな意味を持つと感じていました。課題研究の面白さも、苦労も、少しでも実感した上で進学してほしい。それが出発点でした。
なぜ数学なのか。それは私自身の専門であり、指導しやすいという現実的な理由もありました。しかしもう一つ、理科に比べて数学をテーマにした課題研究が少なかったという事情もあります。他校とテーマが重なりにくく、自分たちなりの独自性を出しやすいと考えました。
ただし中学3年生です。高度な理論を扱うことはできません。そこで「身近にある数学」を題材にすることにしました。日常生活の中に潜む規則性、数の性質、確率の不思議など、生活とつながるテーマを設定しました。
活動は週1回、放課後に行いました。目標は、本校主催の「集まれ!理系女子」で発表すること。初年度は16名が参加し、6つのテーマに分かれて研究を始めました。
しかし、始めてみると現実は想像以上に厳しいものでした。

生徒たちは「何から手をつけてよいのか分からない」と戸惑いました。テーマはあっても、目的が曖昧。仮説の立て方が分からない。調査方法が整理できない。数学的な理解の深さにもばらつきがあり、議論が進まないこともありました。
その原因は、生徒だけではありませんでした。指導する私自身の未熟さもありました。高校生の課題研究と同じ感覚で進めようとしたことが、無理を生んでいたのです。テーマごとに段階的な問いを設定し、細やかに道筋を示す必要がありました。
それでも、「目的」「仮説」「方法」「考察」という研究の基本構造を意識させることで、何とか発表の形まで持っていくことができました。完成度は高くありませんでした。特に質疑応答で十分に答えられなかったことは、大きな反省点でした。しかし、生徒たちは確かに研究の入り口に立っていました。
16名全員が生命科学コースに進学したわけではありません。しかし、研究の楽しさと難しさを知った上で選択した生徒もいました。それだけで、この試みには意味があったと感じています。
翌年以降も活動は継続し、参加者は毎年10~15名程度集まりました。さらに理科の教員の協力を得て、「中学数理課題研究」へと発展させました。数学と理科を横断するテーマを扱い、より多様な探究が可能になりました。
発表の場も広がりました。「集まれ!理系女子」だけでなく、「科学Tryアングル岡山」や「サイエンスキャッスル関西大会」など、校外で高校生に混じって発表する機会を得ることができました。中学生が高校生と肩を並べて議論する姿は、SSHの可能性を象徴していました。
この取り組みを通して、私は一つの確信を持ちました。SSHは高校3年間だけの枠組みではないということです。探究の文化は、もっと早い段階から育てることができる。そしてそれは、学校という組織の中で連続的に設計されるべきものです。
同時に、指導者としての自分の課題も浮き彫りになりました。研究を教えることは、答えを教えることではありません。問いの立て方を共に考え、失敗を受け止め、方向を修正する伴走者であること。その難しさを改めて思い知らされました。
生命科学コースでのSSHの実践は、やがて中学生へと広がり、学校全体へと波及していきました。担任としての経験は、クラスを越えて教育文化の形成へとつながっていきました。

【追加の説明】

次回、最終回では、1期生と4期生を担任して見えてきたSSHの本質について振り返ります。制度を超えて残ったものは何だったのか。クラス担任の目から見たSSHの歩みを、総括します。
  • 投稿者 akiyama : 16:36

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