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「情緒」が人間を創造的にする
   岡潔は、「情緒が人間を創造的にする」ということを一貫して述べています。ここでいう情緒とは、単なる感情の動きではありません。美しいものに心を動かされること、自然の中で不思議さを感じること、人との出会いに感動すること、生命をいとおしいと思うこと。こうした経験が、人間の内部に「まだ言葉にならない世界」をつくります。その世界が成熟したとき、「なぜだろう」という問いが生まれます。岡潔は、この順序を非常…続きを見る
自由を可能にする教育(スピノザの哲学する自由から考える)
   スピノザは『神学・政治論』で、「哲学する自由(libertas philosophandi)」を抑圧することこそが、国家の平和を危うくすると論じている。この考えは、学校教育にも深く関わっている。国家が人々の思考を完全には管理できないように、学校もまた、生徒の心を完全に管理することはできない。むしろ、管理によって生徒の考える自由を奪おうとすると、教育そのものが内側から壊れていく。  スピノザ…続きを見る
映画『急に具合が悪くなる』を鑑賞
【映画『急に具合が悪くなる』のあらすじ】  パリ郊外の介護施設「自由の庭」の施設長マリー。彼女は、入居者を人間らしくケアしたいという理想を抱きつつも、人手不足やスタッフの無理解に悩む日々を送っていました。マリーは、コミュニケーション・ケア技法「ユマニチュード(Humanitude)」を介護施設に取り入れようとしていました。そんな彼女が出会ったのは、日本人演出家、森崎真理でした。真理が演出するのは…続きを見る
ルソーとアドラーから考える、主体性と共同体の教育
 ルソーの「一般意思」とアドラーの「共同体感覚」は、一見すると、政治哲学と個人心理学という異なる領域の概念です。しかし、どちらも「他者と共に生きる中で、個人の主体性と自由をどのように育てるか」という問いに深く関わっています。この二つの思想を手がかりにすると、現代の学校教育、とくに管理や一律化に傾きがちな教育を見直すための重要な視点が見えてきます。  ルソーは『エミール』の中で、子どもを育てる際に…続きを見る
有尾研という思想 ⑨学級通信「ぼうぼうどり」から授業「生命」
⑨ 学級通信「ぼうぼうどり」から授業「生命」 ― 生き方を問う教育の出発点 ― 1 関係から始まった教育  私の教育実践は、一九八三年に清心女子高校に赴任し、最初の年に高校一年生の担任を持ったところから始まった。赴任した学校は、伝統ある、しつけの厳しいカトリックの女子校という印象であった。  当時の高校現場には、いま振り返ると独特の緊張感が漂っていた。一九八〇年代は校内暴力といじめが社会問題化し…続きを見る
有尾類研究所という思想 ⑤研究倫理 
⑤ 研究倫理 生命を扱う研究を成立させる判断の技術 1 研究倫理とは何か ― 生命を扱う研究の出発点 ― 観察だけでは、科学は成立しない。自然を見つめ、そこに規則性を見いだし、問いを立てることは、科学の出発点である。しかし、生命科学においては、観察の対象が単なる物質ではなく、「生きているもの」であるという一点において、他の自然科学とは異なる重さをもつ。生き物は、研究者の好奇心を満たすために存在し…続きを見る
① Education as the Practice of Sustaining the Conditions for Having Questions
1. What Is an Education That Enables Students to Continue Holding Questions? Having spent many years in the field of high school education, I have continued to ask myself how, as a teacher, I should …続きを見る
An Introduction to <i>The Philosophy of the Urodela Research Labratory</i>
I would like to introduce the book I am currently writing, The Philosophy of the Urodela Research Labratory. First, I will explain why I decided to write this book at this point in my life. The reaso…続きを見る
有尾類研究所という思想 ①教育は問いを持ち続ける条件を整える営み
① 教育とは、問いを持ち続ける条件を整える営みである 1 問いを持ち続ける教育とは何か  私は、高校の教育現場に長く身を置きながら、教師としてどのように生徒と関わるべきかを問い続けてきた。その過程で、サンショウウオやイモリといった有尾両生類を対象に、繁殖の研究とその教材化に取り組んできた。  私にとって研究とは、専門家としてだけ取り組むものではなかった。理科の高校教師として生徒と過ごす学校生活の…続きを見る
『有尾類研究所という思想』 この原稿を書き残す理由
『有尾類研究所という思想』という、この原稿を書き残す理由 1 SSHに関わった二十年 私は一九五六年に生まれ、高度経済成長の時代に幼少期を過ごし、一九七九年に大学を卒業して、学校教育の現場に身を置くことになった。高等学校の理科教員として約四十年間勤務し、そのうち二〇〇六年度以降の二十年間は、文部科学省スーパーサイエンスハイスクール事業(SSH)に関わってきた。最初の十年間は清心女子高等学校でSS…続きを見る
『有尾類研究所という思想』の内容と目次
新年度を迎え、これまで文部科学省のSSH(スーパーサイエンスハイスクール)事業において、支援をいただきながら開発してきた教育プログラムの構築過程を、原稿(このこのホームページに公開するだけになるかもしれません)にまとめようと思い立ちました。 今年で70歳になります。世間では「老害」と揶揄されることもある年齢かもしれませんが、来年3月で教育現場を去るので、誰かに参考にしていただけることがあればいい…続きを見る
スピノザのいう自然権とは
ます、スピノザの自然権を理解するために『神学・政治論』の第16章の2節から5節をまとめてみます。 第16章 2節 自然権とは「各個物の力の及ぶ範囲」である。 スピノザはまず、「自然の権利」とは何かを定義します。ここでいう自然権とは、道徳的に正しい権利や、人間社会の法律上の権利ではありません。自然の中に存在するすべての個物が、自分の本性に従って存在し、活動する力そのものを意味します。 たとえば、魚…続きを見る
恩原湖付近の水田風景(雪解け)
先月、恩原湖を訪問した際には、残雪によって水田は完全に覆われていました。そこから14日が経過し、雪はすっかり解けていましたが、現れた水田は休耕田となり、枯れた草に覆われた状態でした。5年前に最後に訪れたときには、春には水が張られていましたが、耕作されていた方が亡くなられた後、放棄されたようです。 この場所を訪れると、雉に出会ったり、水田の脇でシュレーゲルアオガエルが白い泡状の卵塊を産んでいたりと、…続きを見る
「高度経済成長の熱気」と共に育ち、成熟社会への転換点で社会へ出た世代
1956年に生まれ、1979年に大学を卒業した私は、「高度経済成長の熱気」とともに育ち、成熟社会への転換点で社会に出た世代である。1956年は、フランクルの『夜と霧』という「意味への意志」を問う名著が日本に紹介された年でもある。激動の25年を経て、「変わっていく時代に何を信じればよいのか」「教育は何のためにあるのか」、そして「これから残された人生をどのように生きるのか」という問いに向き合わざるを…続きを見る
「自分のためだけに、ただ全力を出す」生き方
 映画アニメ『ひゃくえむ』は、2025年に公開された作品で、100m走に取り組む選手の生きざまを通して、その「才能」「努力」、そして「何のために生きるのか」という根源的な問いが扱われていました。  物語の主人公は、生まれつき足が速く、100m走で常に1位を走り続けてきたトガシです。彼にとって「速さ」はアイデンティティそのものであり、周囲を見下す唯一の根拠でもありました。しかし、理論派で執念深い小…続きを見る
山脇有尾類研究所事業報告(2025年度)
山脇有尾類研究所は、2024年度のSSH指定に向けた準備組織にとどまるものではなく、「女子校から世界の科学舞台へ」という大きなビジョンを具現化するための、科学教育の新たな拠点として機能している。本研究所は、高校生の科学研究を支える存在として、次の三つの役割を担っている。 第一に、「真正な科学研究」の実践の場としての役割である。従来の高校の授業や部活動の枠を越え、大学の研究室に匹敵する「オープンラ…続きを見る
人間にとって、希望を失うことの意味
V・E・フランクルの『それでも人生にイエスと言う』(春秋社)のp132より 当時私がいた棟で最年長だった人が私に話してくれた。・・・ 彼は、奇妙な夢を見たというのです。「2月の中頃、夢の中で、私に話しかける声が聞こえて、なにか願いごとをいってみろ、知りたいことを聞いてみろ、ていうんだ。答えてやれる、未来を予言できる、ていうんだ。そこで、私は聞いたんだ。私にとっていつ戦争が終わるんだって。わかるかい…続きを見る
パワラン島でシュノーケリングを体験
 世界自然遺産の地下河川を巡った翌日、マニラへの帰路につく前日の午前中は、パラワン島が誇るもう一つの魅力である「豊かな熱帯の海」を満喫しました。パラワン島周辺の海は、世界的な環境NGOなどからも「生物多様性の最後の砦」と称されるほど、極めて透明度が高く、豊かな海洋生態系が残されていることで知られています。 1. 海の真ん中の「人工浮島」から、エメラルドグリーンの水中世界へ  まず私たちが訪れたのは…続きを見る
パワラン島へ プエルト・プリンセサ地下河川国立公園
1. ユネスコが認めた「山から海まで」の連続性  この公園は1999年に世界遺産に登録されました。登録にあたっては、その圧倒的な自然美(基準vii)と、地球規模の生物多様性保全における重要性(基準x)が最高峰の評価を受けています。 ユネスコが特に重視したのは、「山から海まで」が一生物圏として完全に連続した生態系を保っている点です。地下河川の下流部は海の潮汐(潮の満ち引き)の影響を強く受けるため、指…続きを見る
フィリピン大学で森林生態系についての講義
 研修の一環として、私たちはフィリピンの高等教育・研究の最高峰であるフィリピン大学ロスバニョス校(UPLB)を訪問しました。同校の森林・自然資源学部(College of Forestry and Natural Resources)において、森林生態学および植物生理学の権威であるアロナ・リナトック准教授(Assoc. Prof. Dr. Alona C. Linatoc)をお訪ねし、フィリピンの…続きを見る
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