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雪花が散る林でオオイタサンショウウオの産卵を観察
2009年1月24日、九州はこの年一番の寒波に見舞われていた。大分県国東市での野外調査である。午前10時、山際を散策していると、林の中に水田跡の湿地があった。残雪が残る静かな林の中で、溜まりの水面がわずかに波打っているのが見えた。近寄ってみると、オオイタサンショウウオが群がり、まさに産卵の最中であった(写真)。
これまで両生類は、雨が降り気温が上昇したときに産卵する¹と考えていたため、サンショウウオの仲間が雪花舞う日中に産卵行動を行うとは、まったく想像していなかった。この日の気温は0℃であった。産卵後に水温を測定すると水面で3℃、水底の泥中でも5℃であった。オオイタサンショウウオは、低温下であっても、また日中であっても、繁殖行動を抑制されることなく産卵するということを、野外観察から学ぶことができた。

写真-20090124a.jpg

有尾類の研究に取り組んだきっかけ
有尾類の研究を始めたのは、清心女子高等学校に勤務してちょうど6年目にあたる1989年3月のことである。同僚の体育教員が、自宅の畑の角にある溜まりで採取した正体不明の一対の卵嚢を、「何の卵か分からない」と生物教室に持ち込んだことがきっかけであった。孵化した幼生は外鰓を備えており、これがサンショウウオ(セトウチサンショウオ)であることが分かった。
継続飼育の結果、2年後に初めて産卵を観察することができた。この出来事は地元紙で紹介され、それを契機にサンショウウオに関する問い合わせが相次いだ。結果として、私自身がサンショウウオについて詳しくならざるを得ない状況となり、有尾類(イモリ類およびサンショウウオ類)を継続的に飼育するようになった。清心女子高校の生物教室はサンショウウオやイモリの飼育ケースで埋め尽くされ、まるで「有尾類に特化した動物園」のような様相を呈していた。大学に異動した現在も、地元高校の生物部生徒とともに、オオイタサンショウウオの飼育を継続している。以下は1992年5月25日の山陽新聞の掲載記事。

920525山陽新聞_カスミサンショウウオ教材 .jpg

有尾類の調査・研究で見えてきたこと
有尾類の卵はゼリー質に包まれた状態で発生し、幼生期を水中で生活するため、水質の影響を受けやすい。また成体になっても、皮膚には毛や羽毛、鱗がなく、水質や大気環境の影響を直接受ける。そのため、有尾類は外部環境の変化にきわめて敏感な生物である。
野外調査を通して気づいた点として、①山際や水田に設置されたコンクリート製U字溝が「死のトラップ」となっていること、②U字溝が自然の自浄作用を奪い、水底をヘドロ化させ、水質の腐敗を招いていること、③産卵場所が人里から離れているため、ゴミの不法投棄が起こりやすいこと、④ペット目的での乱獲、⑤アメリカザリガニなどの外来生物による捕食が挙げられる。
私は有尾類の繁殖に関する知見を得るため、卵からの完全飼育下における繁殖方法の確立を目指してきた。その結果、オオイタサンショウウオでは人工授精や水槽内での配偶行動誘発による産卵に成功した。また、アカハライモリにおいても、繁殖生態に関する新たな発見を得ることができた。
しかしながら、生息数減少の原因が解明され、その解決策が講じられない限り、野外個体群の減少に歯止めをかけることはできない。また、飼育個体を自然環境へ戻すこと自体の問題についても、慎重な検討が必要である。30年間にわたり有尾類と向き合う中で、私は多くのことを考えさせられてきた。日々の餌やりを通して生き物と対話した生徒たちが、生き物への愛情を育み、小さな命の大切さを学んでくれたと、私は信じている。

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文献
洲脇 清:カスミサンショウウオの産卵習性.岡山県高等学校教育研究理科部会誌,28:31-36(1978)
秋山繁治:孵化後、実験室内で飼育し産卵したカスミサンショウウオ.両生爬虫類研究会誌,41:1-5(1992)
山陽新聞:カスミサンショウウオ―自然保護の生きた教材に―人工繁殖にも成功(1992)
Akiyama.S, Iwao.Y., Miura.I : Evidence for True Fall-mating in Japanese Newts Cynops Pyrrhogaster,Zoological Science 28:758-763(2011)
秋山繁治:卵から完全飼育下でオオイタサンショウウオの繁殖に成功.九州両生爬虫類研究会誌,11:62-63(2020)
秋山繁治:イモリ属の北限に生きるアカハライモリの繁殖戦略(秋から春をまたぐ多重交配の謎を解く).生物の科学遺伝別冊,24:340-349(2020)

  • 投稿者 akiyama : 23:26
山脇有尾類研究所内での研究成果の発表会
4月に入学した中学校1年生および高校1年生が、毎日のように有尾研に通い、飼育や観察に取り組んできました。そうした活動の中で、徐々に研究の方向性が見えてきたことから、情報を共有する目的で発表会を計画しました。 中学校1年生は、サンショウウオの繁殖地となることも視野に入れたビオトープ造成に関わる研究を発表しました。高校1年生は、ビオトープに放流しているオオイタサンショウウオについて、飼育下における幼…続きを見る
自宅池に雑草が繁茂。オオイタサンショウウオ幼生は確認。
オオイタサンショウウオの繁殖池を、自宅に隣接した畑の一角に造成したのは2004年4月9日のことである。それ以降、学校で飼育し実験材料として使った後の個体を放流するようになった。 現在では、毎年自然産卵が見られ、約50個の卵嚢を確認できるまでになっている。 しかし、2023年に私が東京に単身赴任してから3年が経ち、定期的な手入れができなくなった。そのため雑草が繁茂し、乾燥の影響が出ることを心配してい…続きを見る
オオイタサンショウウオ幼生をビオトープに放流
文部科学省のSSH事業に採択されたことを受け、校内に有尾類を対象とした生徒研究拠点として「山脇有尾類研究所」を立ち上げた。ここでは、実験室内での生殖や発生に関する実験的研究に加え、野外でサンショウウオが生息可能な環境を再現する生態学的研究もスタートした。 オオイタサンショウウオでは、卵から幼生を育てて変態・上陸段階まで到達させ、2つの実験池へ放流(11月5日に8匹、11月8日に4匹)することで、本…続きを見る
同じ区内の麻布学園と両生類の研究を通して交流
11月1日、山脇学園では、学内に生徒が両生類を対象とした研究に取り組むための施設「山脇有尾類研究所」を開設しています。この日は、同じ港区内にある麻布中学・高等学校から、生徒5名と引率の教員2名が訪問されました。所長が研究所の概要を説明した後、動物飼育室での見学や、イモリやサンショウウオへの給餌体験を行いました。その後、お互いの学校の研究の取り組みについて発表し、活発な情報交換を行いました。本校の生…続きを見る
台湾・日本爬虫両棲類学会合同大会 1日目
台湾・日本爬虫両棲類学会同同大会(日本爬虫両棲類学会第64回台北大会)が、台北市の台北動物園で開催されました。9月2日は、基調講演、口頭発表、9月22日は、口頭発表、ポスター発表、夜にエクスカーションがありました。 基調講演は、①Matt Goetz(Durrell Wildlife Trust/Jersey Zoo)「マダガスカル・アカアシリクガメ(Ploughshare tortoise)の保…続きを見る
日本動物学会でイモリやサンショウウオについての研究を発表
2025年9月6日、日本動物学会第96回名古屋大会における高校生ポスター発表に参加しました。演題は「新規モデル生物イベリアトゲイモリの飼育と観察」および「飼育下におけるオオイタサンショウウオ幼生の形態特性に関する研究」で、これまでの取り組みの成果と今後の展望について発表しました。「高校生ポスター賞」をいただきました。 また、8月に本校と鳥取大学の連携で開催した環境学習交流会に参加していた他校の生徒…続きを見る
有尾研の高1・高2の生徒の研究報告
有尾類研究所で研究に取り組む生徒たちは、これまでの研究の進捗を報告し、先生方や先輩方から講評を受けながら、自分たちでディスカッションを重ねて研究を進めている。 高校1年生は「飼育下におけるオオイタサンショウウオ幼生の形態特性に関する研究」、高校2年生は「新規モデル生物イベリアトゲイモリの飼育と観察」をテーマとしている。 当面の目標は、9月に開催される動物学会における高校生ポスター発表であり、6月2…続きを見る
4ヶ月育てたオオイタサンショウウオ幼生を放流
3月から、有尾類研究所の動物飼育室で孵化後4か月育てていたオオイタサンショウウオ(絶滅危惧Ⅱ類)が変態を迎え、四肢が形成され、鰓が消失して、一斉に上陸を始めました。 現在、ビオトープにおける繁殖や発生の観察、幼生の行動、配偶行動などを研究しています。野外から成体を採取することはせず、繁殖用に設置された人工池で得られた卵嚢から孵化・飼育した個体を研究に用いています。実験・観察を終えた個体は、人工池へ…続きを見る
自宅のサンショウウオ繁殖池の調査
現在、山脇有尾類研究所では、ビオトープにおける繁殖や発生の観察、幼生の行動、配偶行動などを研究しています。野外から成体を採取することはせず、繁殖用に設置された人工池で得られた卵嚢から孵化・飼育した個体を研究に用いています。実験・観察を終えた個体は、人工池へ戻して継続的に維持しています。今年の人工池における3月23日の調査では、卵嚢57対、雄成体54匹、雌成体1匹、越冬幼生8匹、亜成体3匹を確認しま…続きを見る
Pedagogical Insights I've Gained through Rearing Salamanders at School
Due to ethical concerns, it is becoming more and more difficult to use wild animals, including wild amphibians,for scientific experiments. This situation encouraged me to develop a reliable method for…続きを見る
オオイタサンショウウオ繁殖前の自宅池
毎年、オオイタサンショウウオの卵発生の観察や繁殖実験に使った後の個体を自宅の人工池に放流していたら、いまでは毎年産卵が観測できるようになった。今年も2月末から3月には産卵されると思うので、観察しやすいように産卵前に人工池の掃除をこの時期に行うことにしている。 …続きを見る
ハマヤクサイエンス研究会の学術発表会で「サイエンス学びラボ賞」受賞
8月24日にハマヤクサイエンス研究会の第3回学術発表会が開催されました。高校生の59件のポスター発表がありました。最優秀賞1件、協力団体各賞3件、優秀賞9件が表彰されました。生徒の科学研究のためのオープン・ラボを提供している山脇有尾類研究所から、指導している広尾学園高等学校の生徒1名が参加ました。絶滅危惧Ⅱ類のオオイタサンショウウオの研究の基礎資料となる発生段階を完成させ、Developmenta…続きを見る
サンショウウオが棲めるビオトープ計画チームが幼生飼育を開始
トウキョウサンショウウオの卵嚢を採取して飼育し、6月に生徒が現地を訪問して放流しましたが。現在、学校内にサンショウウオが生息し、繁殖できるビオトープの造成を目指して、全体の構想を考えている段階です。まず、室内で幼生を成熟個体まで無事に継続して飼育できるようになることを目指して、実験を始めました。一人5匹ずつ担当して、育てています。完全に飼育下で繁殖できる技術を確立することで、繁殖生態の解明が進める…続きを見る
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日常的な有尾類の飼育を学校教育に取り入れることで見えてきたもの
はじめに  有尾類の研究は、1989 年3 月に勤務していたノートルダム清心学園清心女子高等学校の生物教室に持ち込まれたカスミサンショウウオ(現在のセトウチサンショウウオ)の卵の飼育をきっかけに始まった。それ以降、30 年経過した今でも続いている。  有尾類の飼育は、最初は生物部の活動であったが、今では、科目「科学課題研究」の一部に組み込まれている。それは、2006 年に文部科学省スーパーサイエ…続きを見る
岡山市で「オオきいサンショウオと小さいサンショウウオ」展が開催中
岡山市の人と科学の未来館・サンピアで、春季企画展として「オオきいサンショウオと小さいサンショウウオ」展が4月27日~6月16日の期間、開催されています。 オオサンショウウオの展示 日本の在来種は天然記念物ですが、中国との交雑種は今夏から特定外来生物に指定される「オオサンショウウオ」。サイピアで飼育展示しているのは、中国との交雑種です。 日本の小型サンショウウオの紹介 オオサンショウウオの実物は見た…続きを見る
自宅池で確認したオオイタサンショウウオの卵嚢は57.5対
◆2月23日調査 ・ビオトープ内  卵のう---------19対          オス成体-------13匹 ◆2月29日調査 ・ビオトープ内  卵のう-------7.5対              成体---------53個体           亜成体--------2個体            越冬幼生------6個体   ・外周部(側溝内) 卵のう-----…続きを見る
オオイタサンショウウオが繁殖している自宅池の改修
約20年前の2004年4月9日に畑の一角に、観察実験に使ったサンショウウオを放流する池を造成した。 その後、2012年7月20日に畑の外に成体が逃げるかもしれないと考えて、ブロックで囲う工事を行った。 全部で、サンショウウオが産卵する池7つを設置している。 シートを使った池が20年経過して、水が漏っているので、防水シートを交換した。 …続きを見る
自宅池のサンショウウオ繁殖池が乾燥化
飼育繁殖実験をしたサンショウウオを自宅の人工池に放流して、いつのまにか自然繁殖するようになりました。しかしながら、私が東京に異動して昨年心臓の病気で、1年以上人工池の整備、周辺への水やりができず、乾燥化が進んでしまいました。少しだけ草刈りと水撒きをやってきました。写真(1月30日)は今の現状です。 …続きを見る
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