「ぼうぼうどりの生物教室」は、学校における生物教育・科学教育が、本来もつはずの〈探究する力〉〈生命に向き合う感性〉〈学びを社会とつなぐ力〉を、現場から回復・再構築することを目指した実践記録の場である。
そこでは、授業や部活動、SSHにおける科学研究指導が、単なる成果主義やイベント的発表に終わるのではなく、試行錯誤を含めた「教育実践の記録」として蓄積・共有されることが重視されている。教育は個人の経験に留めるものではなく、次の実践者へと手渡される公共財であるという立場が貫かれている。
また、本教室は、探究活動を「意欲ある一部の教員や生徒の努力」に依存させるのではなく、カリキュラムやコース設計として学校全体に組み込むことの重要性を提言している。SSHをはじめとする探究的学びは、制度として支えられてこそ継続し、文化として根づくという考え方である。
生物教育の面では、飼育・観察・野外調査を重視し、生命現象を「生きた現実」として捉える学びを重んじている。生物を単なる知識の対象ではなく、時間をかけて向き合う存在として扱うことが、生命倫理や環境へのまなざしを育てる基盤になると考えられている。
さらに、女子の理系進学支援についても、理念や掛け声にとどまらず、研究に挑戦できる環境整備やコース設計という具体的な形で示されている。進路選択の自由は、意欲だけでなく、挑戦できる場があって初めて保障されるという視点である。
全体として「ぼうぼうどりの生物教室」は、管理や効率を優先して挑戦を萎縮させる学校文化に対し、失敗を含めて学びを支える教育への転換を静かに、しかし粘り強く提言している。そこにあるのは、教育を制度としてではなく、人が育つ営みとして捉え直そうとする、現場からの問いである。














